第7話 エマの逃避行
結局あの後、エマは3日間学園を休んだ。
ずぶ濡れで帰ったせいで風邪を引いたからというのが表向きの理由で、実際はカレンとレオナルドに会いたくなかったからである。
会えばまた無理難題を押し付けられるに決まっている。出来ればこのまま転校したいくらいだ、両親に泣き付いてみたが、
「まだ入ったばかりじゃないか。もうちょっと頑張ってみなさい」
と、諭されてしまった。
「はぁぁ...学校行きたくないよぉ~...」
なんで自分ばっかりがこんな目に...あの二人のオモチャになるのはもうイヤだ。
「そうだ、逃げよう!」
母方の叔母が我が家の領地に住んでいる。旦那さんを亡くし、子供も居ないので一人暮らししている。エマを我が子のように可愛いがってくれる叔母なら、学校で虐められていると訴えれば匿ってくれるだろう。エマは逃げる決心を固めた。
「行って来ます...」
翌日、風邪が治って登校する振りを装い、こっそりとバッグに着替えや小物をつめるだけつめてエマは家を出た。財布にはお小遣いの全財産をつめてある。
エマは学園とは違う方向に歩き出した。このまま馬車乗り場に行って、領地行きの馬車に乗れば明日には領地に着く...はずだった...
◇◇◇
「おらおら! 金目のもんを全て出しな!」
なんと、エマの乗った馬車は盗賊に襲われてしまったのだ。しかもよりによって全財産を持っている時に。エマは自分の転生した人生を恨むことしか出来なかった。なんでこんなに運が悪いんだろう...私、前世で何か悪いことしたのかな...なんて悲観的な考えに陥った。そんなエマに更なる不幸が襲いかかる。
「野郎どもは皆殺しだ。女は売り飛ばす。俺達でたっぷり可愛いがった後でな」
盗賊の首領らしき男が下卑た嗤いを浮かべた。エマはこれから自分の身に起きることを想像し、恐怖に震えた。
その時だった。
「な、なんだお前ら! ぐええっ!」
馬車の外が騒がしくなり、剣戟の音が響いた。やがて静かになった。何が起こったんだろう? と訝しんでいると、
「皆さん、無事ですか?」
冒険者風の格好をした美人さんが馬車に入って来た。
「えぇっ!? か、カレン様!? な、なんでこんな所に!?」
「えっ? あらやだ、エマちゃんじゃない! あなたこそなんでこの馬車に乗ってるの? 今日は学園休みじゃないでしょ?」
「そ、それを言うならカレン様も同じじゃないですか!?」
「同じじゃないわよ。私とレオは依頼を受けて、最近この辺りを荒らし回っている盗賊団を捕まえる所だったんだから」
「えっ? じゃ、じゃあレオナルド殿下も一緒なんですか!?」
「外に居るわよ。それで、あなたはなんでこの馬車に乗っていたの?」
「え、え~と...りょ、領地に帰る用がありまして...」
「学園休んでまで?」
「そ、それはそのぉ...」
「なんか怪しいわね。ちょっと来なさい」
「あう...」
結局、洗いざらい白状させられて連れ戻されるエマであった。
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