第厵章(3) 永遠《とき》を紡《つむ》ぐ少女
【やや男性読者向け※下品なネタ有】加護 僕は救われて、そして薄々解りかけた相対的な何か大切なこと
僕が意識を取り戻した瞬間、
あろうことか、あいつの目が僕の目の近くにあった。
これはひょっとすると……、
あいつとはつまり愛理栖のことで、僕の唇と彼女の唇が今まさに重なろうとしていた。
「え?え~!」
僕の頭は、この逆白雪姫状態にすぐには適応できず、疑いや驚きのほうだけで頭がいっぱいだった。
僕はそれでも、このチャンスを逃すまじと
目を瞑り、そして唇をタコのように突き出し愛理栖の唇に近づけた。
「チュ、チュ~!」
「ひ、ひかるさん?
バカ!、バカ!、バカ!、バカ!、バカ!、バカ!、
バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!、
バカ!、ひかるさんのバカ~!」
愛理栖は意識が戻った僕に気が付いた瞬間、
一瞬の隙も無く、
僕の頬に痛恨のビンタを何発もくらわせた。
僕の頬には見事愛理栖の往復ビンタのスーパーコンボ愛獄殺がクリーンヒットし、僕はタコ唇のまま最後のトドメでぶっ飛ばされ
ノビてしまった。
「ひかるさん、調子にのり過ぎじゃないですか?
セクハラされた私に誤ってください!さあ!
さあ、早く謝れっつってんだろ?」
「あ、愛理栖、ごめんなさ~い」
眉間にシワを寄せ、僕を睨み付けながらドスを聞かせて
機嫌の悪いヤンキーのように話す素の愛理栖の凶変ぶりは凄まじく、
「わかればいいんですよ~、ひかるさん」
愛理栖の表情は普段の表情に戻ってくれた。
「でもどうしてさっきあんなことしようとしたんだよ!」
「あれは違うくて、本当に違うんですよ!
実はですね」
愛理栖は顔を真っ赤にしながら僕に理由を教えてくれた。
「つまり、僕が全然起きそうに無かったから
人工呼吸をしようとしてくれていたんだね」
「そうなんですよ。他にも、心臓マッサージとか、逆さ張付けとか、急所蹴りとか、とにかくボコったりとか、先にいろいろやってはみたんですよ!」
「成る程、それなら仕方が無いか~
……、っておい!後半の行動はどう考えても
オカシイぞ!僕を殺す気だっただろ!」
「少しだけ……ね、ハート」
愛理栖は『てへぺろ攻撃』に『ハート』まで
つけて、罪をもみ消してきやがった!
「そこはお願いだから否定してくれよ!」
あ~、そうだそうだ。
僕は愛理栖と漫才やってる場合じゃないんだった。
僕は自分の体が元に戻っていた事を今更になって自覚した。
僕が周りの空間を見渡すと、辺り一面
まるでキャラメルマキアートのシロップが
カフェラテと交ざる時のように、沢山の色が複雑に混ざり合っていた……。
「ここが、六次元の迷宮なのか……」
僕は、ついその一生お目にかかれないであろう超高次元世界の光景に気をとられてしまっていた。
そして、僕は何気なくカサカサだった自分の唇を舌で湿らせたときに気が付いてしまった。
「あれ? あいつ、もしかして……、
いけない、いけない」
僕は自分の両頬を叩き、
自分にしっかりしろと言い聞かせた。
そして、愛理栖に洞穴で聞いた秘密の呪文の事を話し、二人で一緒に叫んだ。
『アミュー!』
その秘密の呪文を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます