第18話 2回目の青い春
青春。
青い春とは、まさに人生の春から夏にかけての一時の夢。
瞬く間に終わってしまう
青春は一度きり。
その後は、余生を生きる様に、ただ変わり映えのしない、モノクロで無味乾燥な世界の中を、目的も無く
大人というレッテルを貼られてラベリングされた者達は、夢を叶えて子供のままでいられる選ばれし一部のドリーマー達とは違って、もう終わってしまった存在。
私も、ご多分に漏れる事なく、その憐れな道化である所の大人いう存在を生きていた。
別に、特別悲観する様な事は無かった。
なぜなら、それが、この世界に
いての普通であったから。
この世界の大多数を構成する憐れな道化達は、自分の人生に意味等というものを求めてはいないのであるし、人間製造マシーンとして、ただ命のサイクルを回すだけの全く無価値な人生に異論を唱えよう等という発想に思い至りよう筈もないのである。
それ程迄に、彼らの脳味噌は腐り果てているのであるから。
だから、意味不明で全く許容出来る道理の無いこの世界のルールも、生まれた時からあったからというだけの理由で、何の疑問も持たずに当たり前のように受け入れてしまうし、この世界と対決しようだとか、この世界に何かを残していこうだとかいう事を考えもしないのである。
先人達が定義した【人間】という存在としての在るべき生き方をトレースするだけの無意味な一生を送って、さも私は人間でありますという様な顔つきをする人間の振りをしたサル。
彼らは今際の際になってようやく取り返しのつかない人生の無駄遣いをしてしまった事に気がついて絶望しながら死んでいく、憐れな道化なのである。
全く、命を馬鹿にしているとしか思えない。
だが
もう、血湧き肉躍る様な興奮を味わう事等、
人生の秋を迎えようとしている私の前に、突如として、2度目の青春は現れた。
あまりにも眩し過ぎて、目を開ける事が出来なかった。
すっかり錆び付いてしまった私の心では、それを簡単に許容する事は出来なかった。
それでも、社会的に抹殺され、異常者のレッテルを貼られ監獄に収監された私は、今まさに青春の真っ只中にいる。
私とは一回り違う若者達と、まるで子供の様に、今というこの瞬間を精一杯に生きている。
なぜだろう。
なぜ大人になった私は、今を生きる事をやめてしまったのだろう。
ただ、今を生きるというだけで、こんなにも豊かな心を獲得出来るというのに。
自分の心に従えば、いつだって夢の中の住人でいられるというのに。
私は、先人達の作り出した【現実】という名の呆れるくらいに面白くないフィクションに従って、人生を台無しにしてしまっていた。
お前は命を馬鹿にしている、ふざけるなと
でも、何事にも遅過ぎるという事は無いと私は思う。
だから、もう、決して離さない。
私の心が求める本物の想いを。
そうすれば、私は、私が終わるその瞬間まで青春していられるのだから。
生まれて来て良かったと、心の底から思う。
自分の心の望む未来に、命の全部を懸けたいと渇望している。
今、私は、自分でも呆れてしまうくらいに、心の底から青春している。
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