妻に浮気された夜からJKと同居することになりました。しあわせに暮らしているので今さら謝られても相手にしません

鹿ノ倉いるか

第1話 運命の人

 今日の射手座の運勢は一位だった。

『運命の人に出逢えるかも!?』とのことだ。


「なにが運命の人だ。馬鹿馬鹿しい」


 既婚者の俺にとって今さら運命の人に出逢えるというのは幸運というよりむしろ不運だ。

 ちなみにラッキーアイテムは三日月型のイヤリングだそうだ。

 アラサーの既婚者サラリーマンが観ることは想定してない星占いなのだろう。


 仕事の外回りでたまたま家の近くにいた俺は、昼御飯を食べるために自宅に向かっていた。

 たまには家で妻と食べようという考えだった。

 最近すれ違いであまり会話も出来てなかったし、お昼を食べながら話をしよう。


「ただいまー」


 ドアを開けると家の奥からドタドタっと慌てた気配がした。


「ん? 舞衣まい? いるの?」


 玄関に置かれた靴を見て心臓が凍った。

 俺のものではない、見たこともない男性の靴が置かれていたからだ。


「どうしたの? 早退?」


 妻の舞衣が慌てた様子でやって来る。

 乱れたシャツ、ほつれた髪はただ事ではない気配が漂っている。


「舞衣、お前まさか」

「今からお昼食べに行こうと思って。りくも一緒に行かない?」


 舞衣は俺の腕を取って引っ張り、外に連れ出そうとする。


「ちょっと待て!」


 舞衣の手を振り払い、家の奥へと駆ける。

 その瞬間、リビングから男が飛び出してきた。

 肩から突っ込んできて、倒されてしまった。


「おい、お前! 待て!」


 男と舞衣は大慌てで逃げ出していく。

 急いで立ち上がってあとを追ったが、見失ってしまった。


「くそっ!」


 舞衣に電話しようと思い、スマホを取り出したが無視されるだけだと思いやめた。


 状況から考えて浮気していたのは間違いないだろう。


 結婚して一年半、これまでそんな気配などなかった。

 いや、俺が気付かなかっただけで、ずっと浮気をしていたのかもしれない。

 ここ最近の舞衣の様子を思い出す。


『子どもが出来て小学校を卒業するまで専業主婦でいたいの』

『家事は分担にしようよ』

『残業多くてもいいから給料多いところに転職したら?』

『今度は中学校の同窓会だから1日家を空けるね』


 思い返してみれば怪しい言動ばかりだ。

 そもそも専業主婦で子どももいないのに家事を分担しようとか変な話だ。

 昼間は浮気が忙しくて掃除や料理をする暇もなかったのかもしれない。


 怒りを通りすぎて呆れてしまう。


「俺の結婚ってなんだったんだ?」


 急に馬鹿馬鹿しくなって、笑いがこみあげてきた。

 浮気をされたのになんだか不思議と気持ちは清々としていた。



 ────

 ──



 結局舞衣からの連絡はないまま、一日が終わろうとしている。

 こちらから電話をかけても通じない。

 着信拒否か、電源を切っているのだろう。


「馬鹿馬鹿しい。勝手にしろ」


 さっさと離婚してすっきりしたかった。

 冷静になると怒りも沸いてくる。

 もはや未練もないが、一言文句を言ってやらないと気が済まない。


 悶々としながら、足だけが動いて家に向かっていた。

 ローンが残った、俺一人で住むにはあまりにも広い一軒家のマイホームへと。


 なにが射手座は一位だ!

 なにが運命の人だ!

 なにが三日月型のイヤリングだ!


 夜空を見上げると中途半端な形の三日月が浮かんでいた。


「ねぇ」


 不意に声をかけられて、ビクンッと震えた。


 見るとうちの前に制服を着た女子高生が座っていた。

 明るめに染めた髪、だるんとしたニット、無駄に短いスカート。

 美人だが素行が良い感じではない。


 やたら大きな目とその目尻に小さなほくろがあるのが特徴的だった。

 もちろんこんなギャルの知り合いはいない。

 


「……誰?」


 心身ともに疲れきっていた俺は面倒くさくなって短く問いかける。


「泊めてくんない?」

「は?」

「ここの家の人でしょ? 泊めて」

「ふざけるな。帰れ」

「ウケる。帰るとこないから言ってるんじゃん」

「知るか。俺は疲れてるんだ」

「ただでとは言わないよ? 泊めてくれたら、その、えっちなことしてもいいよ? 結構見た目タイプだし」


 とんでもない発言に度肝を抜かれた。


「お前ふざけるなよ? いつもこんなことしてるのか?」

「はぁ? してないし。今日がはじめて」

「嘘つけ」

「嘘じゃない。だって今日帰るところなくなったんだから」


 なにか深い事情がありそうな言葉に、不覚にも心を動かされてしまった。

 俺自身、今日とんでもないことがあったということで、シンパシーを感じてしまったのかもしれない。


 とはいえ見ず知らずの女子高生を泊めるほど心が動かされたわけではなかった。


「それはお気の毒様。でも泊めるわけにはいかない。悪いな」


 そう告げてドアを開けて家に入る。


「お願い」

「駄目だ」


 追い縋る彼女を無視してドアを閉める。

 その瞬間、見てしまった。

 彼女の耳に俺の本日のラッキーアイテム『三日月型のイヤリング』がぶら下がっていたことを。


 家に入り、どてっとソファーに座る。

 気がつけば昼からなにも食べていない。

 でも特に空腹感はなかった。


 灯りも必要最低限しかつけず、しばらくただボーッと天井を眺めていた。

 気がつけば一時間が経過していた。


 ふと先ほどの女子高生のことを思い出す。

 いったい何者だったのだろうか?

 なぜうちの前に座り込んでいたのか?

 それにあの顔、やっぱりどこかで会ったことあるような気もする。


 まさかまだ家の前にいないよな?


 今は十月中旬。夜になればかなり寒いだろう。

 何時間もいたら凍えてしまう。


「……まさかな」


 恐る恐る玄関を開けると、先ほどと同じ位置に少女は座っていた。


「お前っ……なにやってんだよ?」

「なにって、中に入れてくれるの待ってるんですけど?」


 当たり前のように言われて、思わず笑ってしまった。


 思えば今日はじめて笑ったかもしれない。


「入れよ。今日一日だけ泊めてやるから」

「マジ!? ありがとう!」


 彼女は喜びながら抱きついてくる。


「ちょっ!? 離れろって!」


 ぷにゅーって潰れるおっぱいが柔らかすぎる。


「無理。嬉しすぎて離れられないし!」

「分かったから。落ち着けって」


 まさかこれからこの少女と暮らすことになるなんて、このときは夢にも思っていなかった。




────────────────────



読んでくださってありがとうございます!

謎のギャルとおっさんの明るく愉快でちょっとだけえっちなラブコメです!


ヒロインはビッチ気取りの処女丸出しな玲愛ちゃんです!

主人公はアラサーで調理器具や消耗品の商社に勤める茅野さん。


果たして玲愛ちゃんは茅野さんの運命の人なのでしょうか?


頑張って更新していきますのでよろしければフォローや★評価をよろしくお願い致します!



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