第29話 赤羽山

 車を走らせて、初めて行く赤羽山に向かう。

 途中、コンビニに立ち寄って、ワンカップとサラダチキン味を買う。

 家から1時間位で赤羽山近くの駐車場に到着する。地図アプリで検索すると、其処に到着したからで有る。

 其処は、河川公園と成っている場所で有った。

 車から降りると、杉かひのきの香りが俺を出迎えてくれる。まるで歓迎しているような感じもした。


 其処の河川公園はBBQの施設も有って、春・夏の時期限定らしいがBBQも出来るようだ。炭とか食材は持ち込みらしいが…

 美空はもしかしたら、BBQを行うために此処に来たのかも知れない……

 

 河川公園内には地域の郷土歴史館も有るみたいで、入口の横には飲料水の自動販売機も置いて有る。

 自動販売機でジュースを買って、河川公園を散策する。

 赤羽山は、この河川公園付近に有る山を指すのだろうが、付近には登山道らしき物は見当たらないし、神様が居る雰囲気でも無かった……


 河川公園の脇から出ると道路に成るが、その道路は駐車場から延びている道だった。戻れば駐車場に戻れるが先にも進めそうだ。車で行こうかと考えたが、その先に駐車場が有るかは分からないため、徒歩でその先の道を歩いて行く……


 10分も歩かないうちに、綺麗な舗装道路は終点と成って砂利道に変わる。

 更にその道を進んで行くと、道が二手に分かれていた。

 直線の道はハイキングコースの立て札が立っており、ハイキングコース何だろう。

 もしかしたら、これが赤羽山の登山道かも知れない……しかし『熊注意!』の看板も見つけてしまう!!


 右側に行く道は、川沿いに沿っている道で有るが何も表示は無い。

 只、右側の道は砂防ダムが遠くに見えるので、砂防ダムのアクセス路かも知れない。

 俺がどちらに行こうか迷ったが、直感で右側に行きたかったので右に決めて道を進む。

 一応、熊に警戒しながら歩いて行くと、左側に鳥居が見えてくる。


(こんな、山中に神社……まさか!?)

(これが赤羽山の神様!?)


 俺は鳥居に近づき、鳥居からの先を眺めるが、細くて険しい山道が有るだけで、本殿の姿は全く見えない。山道と言っても獣道に近い状態だ。


 鳥居が立っているが、神社の名前は分からなかった……。周辺を探したが、神社の名前の判る物は無く、古い鳥居が立っているだけで有る。地元の氏神様かも知れない……


(ここが、恐らく赤羽山何だろうけど……。登山の準備何てしていないぞ!?)


 俺の格好……。完全の軽装で有る。有るのは先ほどの自販機で買ったジュースだけ……

 それでも、折角来たのだから、鳥居をくぐって山道を少し歩くと『ヘビ注意!』の看板を見つけてしまう。


(うぁ! 熊の次は蛇か!!)

(こんな山中で、毒蛇に噛まれたら不味いぞ!!)


 道の状態も非常に悪く、少し登ったけど、本殿が有る雰囲気が無い!?


(山中に有る神社だから、山頂付近に有ったら無理だな……)


 本殿に向かうのは諦めて鳥居まで戻る。どんな時期でも山は舐めない方が良い!

 お供え用に買って置いた、ワンカップとサラダチキンは外装から取り出して、綺麗そうな場所に置く。


「赤羽山の神様……。ありがとうございました!」

「結果的に、窮地から脱する事が出来ました!!」


 俺はそう言い終えて、後にしようと考えていると、草むらから『ガサガサ』と音が聞こえてくる。


(何かの小動物が…、サラダチキンを取りに来たか?)


 俺は軽い気持ちで草むらの方を眺めていると、直径10cm位のヘビが草むらから出て来た!?


「でけぇ! こんな大きな蛇、初めて見た!!」


 俺は思わず声を出してしまう。

 蛇は俺の声に気づいたのか…、俺の方を一瞥いちべつして、そのままサラダチキンを口で器用にくわえて、再び草むらに戻って行った……


(もしかして……あれが、赤羽山の神様!?)


 俺はそう考えたが、近くに居た蛇だと思う事にした。

 信じた方が良いかも知れないが、信じたく無い自分も、またそこに居る。


 美空のリボンもこの場で、一瞬返そうかと考えたが、鳥居の前に置いても無意味だし、さっきの蛇見たいに持って行かれる位なら、俺が持って居るべきだと思った……


 美空の事は好きと言えば好きだが、形があくまで人形がベースだったからで有る。

 本来の美空の姿も知らないし、名前も美空では無いはずだ!


 リボンが手掛かりに成るだろうけど、美空がどれだけ俺の事を知っているかは分からないし、下手に探し出したら迷惑に成る事が殆どだ。

 このリボンは俺の一生のお守りにしようと考えていた。

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