第24話 面接日 その4

 この後は、面接は現場所長に代わって面接が進んで行く……


「……早見さんは、何か趣味は有りますか?」


 面接も終盤に入っており、本人を中心とした面接と成っていた。

 趣味に関しては、聞かれる事は無いと思って特に面接練習はしていなかったし、聞かれても恥ずかしい趣味では無いので素直に答える。


「趣味と言うほどでは無いですが、ドライブが好きで1人で良く旅行に行きます!」


 と答えたが、周りが一瞬光る。


「正輝…。合コンでもそんな答え方しないよ…」


 美空が心の中で話し掛けてくる。


「えっ!? でも、趣味だろ!」

「ドライブのどこがいけないの?」


「別にあなたの趣味にケチを付ける気は無いわ!」

「だけど、場を読んで喋りなさい」


「……じゃあ、この時はどう答えれば良いの」


 俺は少し不満に感じながら美空に聞く。


「ドライブだと大雑把すぎるから、例えば『自然の景色を見るのが好きで、良く観光地に出かけます』とか『野球観戦やサッカー中継等のスポーツ観戦が好きです』と言った方が余程受けは良いわよ!」


「そんな者か?」


「良いから、私の言う事聞きなさい!」


「じゃあ、ドライブとは言わずに、野球観戦やサッカー中継等のスポーツ観戦が好きですに言い換えるよ」


「そうしなさい!」

「あなたは、最初の質問で失敗しているから、有利な状況では無いわ!」

「趣味の質問でも、当たりの良い回答をして置けば、その分がプラスに成るわ!」


「んっ…分かった。ありがとう。美空」


「あと少しだからと言って、気を抜くんじゃ無いよ!」

「もう、私は魔法が使えそうで無いから控え室に戻るけど、最後にミスをするんじゃ無いよ!!」


「気を付ける…」


 俺がそう言うと、周りが一瞬光る。時間が戻ったようだ。

 俺は先ほどの趣味の質問を美空の言われた通りに答えると、五崎重工はスポーツチームに協賛しているらしく、美空の言われた通り受けは良かった。


 こうして、俺の面接は無事終わった……

 合否に関しては数日中に郵送されるそうだ。


 俺は控え室に戻り荷物を持って、監視役に挨拶をして部屋を出て、事務所付近に居た女性にも挨拶をして駐車場に戻る。


 車に乗り込み、美空の確認をしたかったが、美空はまだ透明人間状態なので確認が出来ない。

 公共設備内の駐車場だから、ここで姿を現すと色々と問題が出てくる。付いてきて居るはずだが、知りようが無いと思った時に…


 車内に置いて有る、室内が曇った時に拭く雑巾が急に浮かび上がる。

 その雑巾は、助手席のシート付近を浮かびながらクルクル回っていた。


「美空。居るんだな!」


 俺がそう言うと、雑巾は上下に動き出す。


「じゃあ、美空。出発するよ!」


「門を出て、最初の信号機を左折したら戻って良いよ!」


 俺はそう言って、車を発進させる。

 公共設備の門を出て、信号を左折して、しばらくすると美空の姿が助手席に現れる。


「あ~~、疲れた…」


 開口一番。美空はそう言った。


「ありがとう美空! 凄く助かったよ!!」


「全く……。私が居なかったら、あの状態だと不採用だよ…」


「面目ない…」


「まぁ、良いわ。無事に終わったんだし、後は結果次第ね…」


「内定(採用通知)貰えると良いな」


「恐らく、貰えるわよ!」

「正輝……。今日の面接内容忘れちゃ駄目だよ!」

「基本的な受け答えなんだから!」


「あれだけ、苦労して練習した面接と、あんな厳しい面接……。簡単に忘れないよ!」


「そうしてよ……期待しているんだから…」


 美空は静かに呟く。


「えっ!」


「何でも無い!」

「それより、私はお腹が空いたから、本物のラーメンが食べたい!」

「美味しいラーメン屋、連れてって!」


「ラーメン?」

「俺、背広なんですけど……」


「背広なんて脱げば良いし、ネクタイも、もういらないでしょ!」


「それも、そうだな」

「じゃあ、ラーメン食べてから家に戻るか!」


「そうしてよ……」

「あの魔法使った所為で、お腹ペコペコ」

「ラーメンとチャーハンは平気で食べられるかも?」


 美空はそんな事を言っている。

 シャツは汚れてもクリーニングに出せば良いだけだから、美空とラーメン店で食事を取ってから家に戻った。

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