第10話 この子は何者!? その1

「ふぅ~、少しは落ち着いた!!」


 女の子は満足そうにお腹をさすっている。その子はラーメン1人前を綺麗に完食した。

 見た感じは中学生か高校生位の顔つきと背丈で有るが、本当に何者だろうか?


「あ~~、やっぱり、食べると言う行為は良いね!」

「あの時は迷ったけど、しばらくは安心出来そう」


 機嫌は少し直ったようだが、ここに居着く気か!?

 居着かれても困るし、わめかれて警察沙汰にされるのも困る。

 どの様な状況で入り込んだか分からないが、穏便に済ませなければ!!


「ねぇ……俺の名前はさっき教えたけど、名前は何て言うの?」


「名前?」

「何それ?」

「そんなの、知らないわよ…」


 先ほどまでの機嫌の良さは何処に行ったのか?

 女の子は急に不満げに答える。


「いや『何それ?』で無くて……、君の名前だよ。な・ま・え」


「私に名前が有るの? 教えてよ!!」


「こっちが知りたいんですけど……、何処かで頭ぶつけた?」


「はぁっ!?」

「そんな事言われても困るのですけど!」

「でも……頭はぶつけた覚えは無いけど、身体中が痛かった覚えは有るわ!」


 その子はそう言うと、自分の体をあちこち触り出して、それで満足しなかったのか急に服を脱ぎだした!?


「ちょ、ちょっと、ストップ!!」


「えっ……!?」


 その子がワンピースのサイドファスナー下げて、服を脱ごうとしだしたので、慌てて止める。


「何で、脱いじゃ駄目なの?」

「どこか怪我をしているかも知れないのに!!」


「怪我?」

「君。どこか怪我したの?」


「分かんないよ!」

「だから、それを確かめるんだよ!!」


「怪我を確かめるのは良いのだけど、俺の目の前で脱ぐと俺に裸見られちゃうよ」


「!!」


 俺がそう言うと、女の子はワンピースのファスナーを急いで上げる。


「……」


 その子は何故か俺を睨み付けてきた。

 そして、冷静な口調で言う。


「怪我の確認したいから、何処か行ってくれる?」


「別に此所で無くても洗面台に行けば鏡も有るし、鍵は付いて無いけどドアは有るから、そこで確認したらどう?」


「その場所はどこ?」


「玄関の横って言っても、分かんないか…。案内するよ」


 俺は女の子を洗面台に案内する。


「絶対、覗かないでよ!!」

「覗いたら、死ぬまで不幸が襲いかかる魔法を掛けるから!!」


「はい。はい。覗かないから、大丈夫!!」


 その子が洗面台のドアを閉めるのを確認してから部屋に戻る。


(それにしても、何者なんだろう?)

(名前も分からない。魔法とか訳分からない事言うし、何でこんな奴が家に侵入して来たのだ!?)


 状況を聞きたくても、その子は怪我の確認をしている最中だ。

 どこか怪我をしていれば、当然痛みや出血はするから服を脱いでまでの確認は、した方が安心には決まっているが……

 その子が部屋に戻って来るまで、俺はただ待つしか無かった。

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