第6話 謎の女王

 馬車に揺られながら長閑のどかな景色の中を眺めている。

 よく分からないまま異世界に来てしまったけど、いつの間にか馴染んでいるような気がする。

 そういえば、ゲームのイベントが今日からスタートだったような。

 限定キャラを手に入れられないのは残念だけど、今は自分がゲームの中に居るような感じなので、それはそれで楽しんだ方が良い気がしてくる。


「すう……すう……」

 横に座っている咲が眠ってしまい、首をこくりこくりさせてからオレの肩にもたれ掛って来た。

 咲の寝顔は可愛いな――――


 咲のほっぺをプニプニしてやる。

「んんっ……」

 ふふっ、何だかイタズラしたくなってくるな。


 次は、おっぱいをプニプニしてやれ。

 プニプニプニプニ……

 オレは悪乗りして少し過激になる。


「うぅん……あんっ……」

 面白い! 昨夜の仕返しをしてやる!


 更にプニプニするため両手でおっぱいを触ろうとしたら、背後から視線を感じる。

 恐る恐る振り向くと……

 あいちゃんがニマニマした顔で見ている。


 しまったぁぁぁ! あいちゃんに見られていた。

 咲が寝ている間にセクハラしていたなんて知られたら怒られる。


「あ、あの、あいちゃん……」

「むふふっ、黙っててほしい?」

「うん、黙っていてくれるの?」

「じゃあ、代わりにぃ~」


 あいちゃんは、オレの体の敏感な部分を狙ってアチコチさわさわイジイジしてくる。

 こっちもセクハラだろ!

 最初はこっそりやっていたけど、段々エスカレートしてイチャイチャしまくっている。

 相乗りしている他の乗客に、エッチな事をしているのがバレて白い目で見られしまう。


「あいちゃん、それ以上は……限界だから……」

「むふふふっ、はるっちぃ~相変わらずイイ表情するねぇ」

 ダメだ止まりそうにない。

 オレは諦めて、ひたすら耐えた――――




 馬車が王都までの中継地点の村に寄った時に、商人達がおかしな噂話をしているのを聞いてしまう。

 王都フォーリントンに、異世界から新しい女王が召喚されたという話だ。


「異世界から召喚された女王って……」

「まるで渚みたいだな」

「なぎさっちだね」

 皆思う事は同じだったらしい。

 大嶽渚は、見た目も性格も女王然とした女子なのだ。


「やっぱり渚様だよな。王都に入ったら確かめてみよう」




 王都フォーリントン――――


 召喚された新女王は、すこぶる不機嫌だった。

 理由も分からず異世界に転移させられ、勝手に女王にされて振り回されている。

 もう、イライラしてばかりでストレスも性欲も溜まり放題である。


「んあ゛ぁぁぁぁぁぁー!」

 女王……渚は今日何度目かの奇声を上げた。

 もう、春近に逢えないだけでイライラもムラムラもマックスなのだ。


 

「女王陛下、よろしいですか」

 側近の声が聞こえる。


「入りなさい」

「はっ」


 側近は、ゾロソロと謎の若い男達を連れて部屋に入って来る。


「女王陛下がお気に召すか分かりませぬが、王都選りすぐりの男娼を連れて参りました。どの男も美男子揃いですぞ」

「はぁ……?」

 前に並んだ男達は女王に気に入られようと、とびきりの笑顔を作ってしなやかな肉体美を見せている。


「ぐぬぬぬぬぬ……」

「いかがなされました、陛下?」


「もう! 何なの! こんなの頼んでない! 帰してきて!」

「あああ、すみませぬ」


 女王の寵愛を受ける為に媚びを売りまくっていた男達が、がっかりした表情で引き下がって行く。


「申し訳ございませぬ。陛下がお喜びになるかと思い……」


「全く喜ばない! あんなの好みじゃない!」

 渚のイライラが更にヒートアップしてしまう。


「あたしの好みはね、顔は春近みたいな感じで、背格好も春近みたいな感じで、性格は春近みたいな感じで、それで、私が迫るとちょっと怯えた感じの表情がたまらなくて……そう、春近みたいな感じなの!」


「そ、その……つまり、ハルチカという男を探してくれはよろしいのですね」

「それよ!!!!!!」

 渚は、何故今まで気付かなかったのかと悔やんだ。

 最初から側近達に命令して春近を探させれば良かったのだ。


「今すぐ春近を探してきなさい!」

「ははっ」

「いい、傷一つ付けずに丁重に連れてくるのよ! 少しでも傷があったら承知しないから!」

「分かりました」



 渚は、春近を手に入れた後の事を妄想して上機嫌になった。

 ふふふっ、春近が見つかったら何してやろうかしら。

 取り敢えず、足を舐めさせるのは鉄板よね!

 そうだ、体中至る所を舐めさせてやる! あたしが満足するまで何時間も!


「ふふっ、うふふふっ……」

 先程までのイライラが何処に消えてしまったのかというくらいに、渚は急にウキウキ気分で笑顔になった。




 村で補給や休憩を済まし、再び走り出した馬車の中で春近達はくつろいでいる。

「早く皆に逢いたいな……」


 呑気に景色を眺めている春近だが、王都でドS女王にどんな責めを受けるのか知らずにいた――――

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