第4話 ●襲撃 ~やっぱりそうなるよね

数日後、カーゴは王都での商談を終え、馬車に揺られながら、自身の町へと向かっていた。


今回はよい商談ができたのか、笑顔が絶えない。


また、今回は護衛で騎士団のうち腕利きの2名の団員、アインとベートが同行しているためか、リラックスしている様子である。


王都からオダワ町までの街道は山を切り開いて作っており、道の両脇は鬱蒼とした木でおおわれているが、道自体は舗装され整備されている。そのおかげで交易も活発になっている。


明るいうちは比較的多くの人がその道を使って往来している。


だが、いくら整備されているからと言っても、安全が保障されているわけではない。


王都と町の間には、見通しの悪い場所もあれば、人気が少ない場所もある。


そして、盗賊団の出没多発地帯もある。


「ご存じかもしれませんが、これから盗賊団の出没多発する場所に入ります。」


馬車を運転している御者がそのように伝えると、馬車の中の空気が明らかに変わった。


さっきまで、談笑していた、カーゴたちの表情が引き締まった。


もちろん、今までもある程度は警戒をしていたが、盗賊団出没多発地帯に入ることを改めて言われると、気持ちも引き締まる。




オダワ町までは、あと2時間ほどのところまで来ていた。あともう少しで無事に町に到着できる。


そう思うと、何事もないことを無意識に祈ってしまう。


「ベートさん、盗賊団は来ますかね?」


少し不安気に、カーゴが騎士団員の一人であるベートに問いかける。


「カーゴさん、それがわかれば苦労しませんよ。」


ベートが、笑みを浮かべながら、若干自虐的に答える。


確かにそのとおりである。


襲ってくるのは、盗賊団の都合であって、こちらの都合は全く関係ない。


質問したカーゴ自身も、そんなことは承知だが、不安のあらわれか、思わず口走ってしまった。


そのことを察してか、ベートも特にカーゴの質問をたしなめることなく、笑顔で返したのだ。


「ですが、安心してください。騎士団の中でも一二を争う実力者である、われわれアインとベートがいる限り、必ずやお守りし、盗賊団を捕まえてみせますから。」


もう一人の団員、アインがカーゴを安心させるためか、それとも本当に自信があるのか真意は不明だが、胸を張りながら、声高にそのように告げた。


カーゴも事前に彼らの実力は聞いていたが、改めて言われると、不安な気持ちが少し和らいだ気がした。




「ボン!!!!!」


突然、馬車の目の迄大きな破裂音がした。


すると、その音に馬車を引いていた馬が驚き、暴れだし馬車が横転してしまった。


「なんだ?!」


カーゴは突然の出来事に思わず声をあげたが、騎士団員は冷静に対応し、アインがカーゴを抱えすぐに馬車の外に出、ベートは御者を抱え、一か所にあつまり戦闘態勢をとった。


不自然な爆発音が、盗賊団の襲撃であることを察知したようだ。




すると案の定、カーゴたちの目の前に盗賊団の一団が現れた。屈強な男たちが5名。手にはナイフが握られていた。


「あれ?なんでこんなところに騎士団がいるんだ?」


盗賊団のまとめ役と思われる男が、カーゴたちにゆっくりと近づいてくる。


「へー、今度は騎士団様が商人の護衛にもつくようになったんだ。オレたちをとらえようと必死だね」


うすら笑いを浮かべながら、さらに距離をつめる。


「お前らが、この近辺で暴れている盗賊団か?」


アインが剣をかまえながら、まとめ役に問う。


「暴れているなんて心外だな。オレたちの活動に寄付してもらっているんだよ。寄付。」


アインの問いにあざ笑うかのように答える。


まとめ役のうしろにいた手下たちが、まとめ役の前に出ようとしたとき、まとめ役がそれを手で制した。


「今回はオレひとりでやる。お前らは手をだすな。」


騎士団の実力者2名に対してひとりで挑むなど、本来なら無謀だが、なんの躊躇もなくさらに距離を詰めてくる。


アインとベートはまとめ役から発せられる雰囲気から、只者ではないことを察し、表情がこわばっている。


(勝てない。)


アインとベートは直感的にそのように感じた。彼ら自身数々の修羅場をくぐりぬけてきたが、その彼らをもってしてもそのように感じさせた。


ベートは剣を身構えながらも、ポケットに手を入れ、何かのボタンを押した。


「いくぜ。」


まとめ役は一言発し、次の瞬間あたりはカーゴたちの血で真っ赤に染まっていた。

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