第二話 新たなスタート

 ゼルドリスからのパーティー追放を言い渡された俺。そんな俺をなぜか、かばってくれるアスナ。


「ゼルドリス! あなたは一体何を言っているのですか! 彼だって我々勇者パーティーの仲間なのですよ。それにこの世界を救う勇者は」


 アスナが凄く大事なことを言おうとした時、


「そうだな、この俺はこの世界を救う勇者だ! だからこそ、このパーティーのことを誰よりも考えるリーダーでもあるんだ。その俺が、スレイブを邪魔だと言っているんだ。あいつがいるとこのパーティーの戦力はかなり落ちる。それは将来的にこのパーティーの全滅を招くことになりかねないからな」


「何を言っているのですか! 彼がこのパーティーにとって邪魔になるなんてことありえないでしょ!」


「ありえないも何も、現状であいつは、このパーティーのお荷物だ! そんな奴をこれ以上このパーティーに置いておくことなんかできないんだよ!」


「ですが!」


 アスナがゼルドリスに反論しようとした時、


「もういいよ」


 俺が止めた。


「ゼルドリスの気持ちは分かった。どうしてアスナが俺のことをかばってくれるかは分からない。ただ他の皆がそこまで言うなら俺はこのパーティーを出て行くよ」


「何をいているのですかスレイブ。あなたはこのパーティーにとって」


「もういいんだ。このままこのパーティーにいたって、ただ肩身の狭い思いをするだけだ。それなら一人の冒険者としてやっていく方がましと言うものさ」


 俺は諦めた。ここまで言われてまでこのパーティーにいたいと思わない。それに一人になった方が気楽であろうと考えたのだ。


「ゼルドリス、一つだけいいか」


「なんだ」


「このダンジョンを出るまでは一緒にいさせてもらっていいか? 俺一人ではこのダンジョンを無事に出られないかもしれない」


「それくらいなら別にいいさ」


 俺はダンジョンを出るまでの間のみ、一緒に行動することになった。


 俺達はダンジョンを出るまでの間、誰とも会話をしなかった。それもそうだろう、先ほどあれほどのことを言われて何を話すことがあるのか。ただ、アスナだけは、俺に何かを話そうとしていたが、結局何も話してはこなかった。


 暫くして、俺達はダンジョンの出口へとたどり着いた。既に外は夜、真っ暗であった。


「ここでお別れだな」


「そうだな。宿の荷物は片付けておけよ。あそこは俺が金を払って借りているんだ。このパーティーを出て行くお前は、あそこにいる資格はないんだからな」


「ああ、分かっているさ」


 俺は、勇者パーティーから離れて一人、宿へと向かって行こうとする。


 その時、


「私もスレイブについていきます」


 アスナがそんなことを言ったのだ。


 それに対して他のメンバーは、驚きのあまり声を発することが出来なかった。


「何を言っているんだアスナ! おまえはこのパーティーに必要な人材、勇者パーティーに相応しい冒険者なんだ。あんな奴についていったって何にもならないんだぞ!」


 アスナの言葉に対して声を発するゼルドリス。


「私がお仕えするべき勇者様は、」


 と、アスナが言いかけた所で、


「その言葉は有難くいただいておくよ。だけどアスナほどの力を持つ者が俺なんかについてきたって宝の持ち腐れになる。君がその力を輝かせることが出来るのは、ゼルドリスの率いる勇者パーティーだけだ! だから君は、このままこのパーティーにいた方がいいよ」


「ですが」


「アスナ! スレイブだってああいっているんだ」


「分かりました」


 何か少し悲しそうな顔をしているアスナ。だけど、彼女にとって勇者パーティーにいた方が絶対に言いに決まっているんだ。


「今までありがとうな」


 俺はそれだけ言って街へと向かって行くのであった。


 それとは別にゼルドリス達は依頼の報告のために冒険者ギルドへと向かうのであった。






「はあ~、一人になっちまったか」


 宿へと向かう道中、一人俺はそんなことをつぶやいていた。


 これから一人で冒険者としてやっていかないといけない。そのことを考えると少し悲しくなっていく。


 ゼルドリス達の前で少し強がりを言ったが本当は、パーティーを離れたくはなかった。


 そんなことを考えながら歩いている内に、宿へと到着した。


 ドアを開けて中に入ると、


「お帰りなさいませ!」


 受付にいる少女が元気に迎えてくれる。


 俺はその声を聞きながら二階にある部屋へと向かう。


 俺達の部屋は宿屋の二階の突き当りにあり、この宿で一番高い部屋を借りていた。


 部屋の中にはベットが六つあり、一人一つで使っていた。


「こことも……おさらばか」


 荷物を片付けた後、部屋を出る前に一度振り返ってみる。


「最初の頃はこんな宿に泊れずに苦労していたよな」


 などと、勇者に選ばれた初めのころを思い出す。あの頃の苦労、まだメンバー全員仲が良く、全員一丸となっていろいろなことに挑んでいた。


 だからこそ、三年で俺達のパーティーは、ここまで成長することが出来た。


「さて行くか! 今日からまた新たな冒険の始まりだ!」


 などと独り言を言っているのかと思いながら俺は、宿を後にするのだった。

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