大聖女になりたいので、王子の求婚は断固拒否しま……しますったらします!

青によし

プロローグ


「アンナ。俺は、お前のことが、そ、その、好きだ。だから、結婚してくれ!」


 顔を真っ赤にして叫ぶこの国の第二王子、キール・ジェグロフ。とても綺麗な顔立ちで一見近寄りがたいけど、年下特有の甘ったれた部分もあって、アンナは彼のことを好きだった。もちろん、弟みたいに愛でる存在としてだ。


 アンナはついにこのときが来たと思った。やはり、彼との出会いは神様ボーナスだったのだと。


「受けて立とうじゃないの、神様」


「はっ、神様?」


 アンナの独り言を聞き取ったキールが、不服そうにじーっと見てきた。求婚の返事をくれと、瞳が語っている。


「なんでもありませんわ。それより、申し訳ございません。わたくしは誰とも結婚する気はないのです。夢を、叶えるために」


「夢? いや、別に結婚したってアンナは好きなことやればいいじゃん。俺は邪魔しな…………ゴホン、ちなみになんだけど、アンナの夢って何?」


 キールは途中で我に返ったように、おずおずとアンナの夢を聞いてくる。


「大聖女となり、この国のために我が身を捧げることです。ずっと、今よりもずっと前からの夢だったんです。男の方に頼らず、自分の力で生き、人々の役に立つこと。大聖女という役目は、まさにわたくしの理想です」


「大聖女……それは……無理じゃ、大聖女になったら一緒にいられないし、そもそも危ないこともあるかもしれないし、手が出せなくなるし、許可できな……、いや、でも、なんとか道があるはずだ。うん、そうだ。何事もやってみなけりゃ分からない」


 キールは考え込んだ後、ぶつぶつと言い始めた。詳細は聞き取れないが、自分で自分を鼓舞する姿に、哀れみが漂っている気がする。


「とにかく、キール殿下。わたくしは結婚いたしません。せっかくプロポーズしてくださったのに、申し訳ございません」


「ま、待て。これは、予行演習だから。本番までに、絶対にアンナに好きになってもらうからな!」


「えっ、それは往生際が悪いのでは」


 思わず王子に向かってツッコミを入れてしまう。


「うっさい! 俺はアンナと結婚するんだって決めてんだよ。覚悟しとけ!」


 キールは甘ったるい言葉を捨て台詞のように吐いて、走り去っていったのだった。




 神様ボーナス、正式な付与は一年後。

 アンナが18歳になるとき、運命が決まる。



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