第10話懸念と一安心
会社の方には緑祥寺が休むことを伝え、金瀬に後輩を頼み、会社に出社した俺だった。
まあ、あの調子であれば後輩を慰められるだろう、金瀬は。
カタカタカタカタとキーボードを打ちつけた音がオフィス内に響いている。
「よぉ~っ!あの後輩が休むなんて珍しいね、何でか知ってるんでしょ?」
背後から近付き肩に手を置いてそんなことを口にした人物は、同僚の矢仲だった。
「そうだな......珍しいな。さぁ......」
「隠しきれてないんだよ、ほんと。ある奴がさ、後輩と帰っているのを目撃してたらしくてさ......噂、流してるらしいぜ」
「そうか、先輩なのか?」
「おいおいっ!締め上げようって魂胆か?そりゃあ~やりすぎってもんだぜ。噂を流されたぐらいでさぁ。まあ、ほどほどにな......先輩じゃないよ、そいつ。深掘りしないでおくよ。カタがついたらにしておくよ、優しいかんなぁ~俺は」
中途半端な高さまで手を上げて、ゆらゆらと手を振って席に戻っていった彼。
そんなことだろうと思ったよ、周りからの視線でおおよそは分かっていたが......陰湿な奴だということか、そいつは。
何事もなく、定時で会社を後にし、帰宅した。
金瀬と後輩は、ソファで楽しそうに談笑していた。
「お帰りぃ~」
夏美にただいま、と返し金瀬に声を掛け、後輩の様子がどうだったのか訊ねると詳細に語ってくれた。
──ようするに、過去のトラウマと重なり、今朝のような様子になったということだった。
「──らしいです。今はあのように落ち着いているので大丈夫かと」
「ごめんね。大変なことを押し付けて」
「ご迷惑をお掛けしている身なので、これくらいはしないと......」
「本当にありがとう。金瀬さん」
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