第7話 無題

 その人の顔を俺は覚えていない。けれど、手の感触だけは記憶に残っている。頭を撫ぜてくれる優しい手。そして俺を抱きしめる腕。

 この前久しぶりにある人に抱擁され、その事をふと思い出した。知らず、言葉が口をつく。

「……かあさん」

 なぜだか、ぽろぽろと涙がこぼれた。



 お題:手 で書きました。

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