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 ガトリング銃より銃弾が途切れることなく撃ち続けられている。今までの銃の様にタイムラグが全く無いのだ。


 以前からあったガトリング砲の様に一箇所に固定されているなら、止まない銃撃でも攻撃しやすかったのだが、小型化され持ち運びも容易になったガトリング銃は厄介以外の何ものでもない。


 家屋や岩陰に隠れ身を潜めるジネーヴラ、エルダ、レオンティーヌの三人。木の影では、木の幹ごとガトリング銃で木っ端微塵にされてしまう。


「さて……どうしましょうか」


 ガトリング銃の銃声で色んな音が消され、身動きの取りにくいジネーヴラはそう呟くとふぅっとため息をついた。


 ガトリング銃を持った兵士に近づくと、今度は剣を持った兵士がいる。それも能力者。しかし、戦闘レベル的には相手にならないのだが、なんせ相手は頑強な鎧に包まれており、ガトリング銃を気にしての浅い斬撃程度では傷一つつかない。


 流石はクラン帝国の技術力。敵ながら天晴れなものだとジネーヴラは密かに思った。そんな間にも、じりじりと攻撃の輪を縮めてくる兵士達。


 とその時、金属と金属がぶつかり合う激しい音が辺りへと響き渡ると、剣を持つ一人の兵士がよろめき片膝をついた。さらにもう一撃、後頭部へと鉄の棒を叩きつける。流石の頑強な兜でも、その衝撃を吸収することはできない様であり、兵士はそのままうつ伏せに倒れてしまった。


「ふへっふへっふへっ……いくら重厚な鎧とはいえ、所詮中身は人よのぉ……衝撃には耐えられまいて、ふへっふへっ」


 先に大きな鉄球がついた鉄の棒を軽々と振り回し、さらに、何事かと振り向いたガトリング銃を持つ兵士の側頭部を殴りつける。


 殴られた兵士はガトリング銃を落とすと、ふらふらと二三歩よろめき仰向けに倒れていく。そこへとどめを刺すかの様に、もう一撃加える。


 すると殴りつけた少女、夕顔はふへっと笑い鉄の棒を背中へとからうと、倒れた二人の兵士の足を掴みその場から離れて行く。


 前にはジネーヴラがいるため、残った兵士は後を追う事も出来ない。後を追うものなら、背後から殺られるのは目に見えているからだ。


「良い判断じゃ……我を追うと背後から首を狩られるからのぉ……ふへっふへっふへっ」


 廃屋の中へと引きずり込まれていく兵士。すると、廃屋の窓から二つの物体が兵士達の元へと飛んで来た。ごろごろと転がりながら、ちょうど足元で止まった。


「ひゅっ」


 一人の兵士が変な声を上げた。それも無理はない。飛んで来たのは、引きずられて行った兵士達の生首であったのだ。


「ふへっふへっふへっ……まずは三点頂きじゃ」


 残り一人になったガトリング銃の兵士が銃弾を撒き散らしながら、ジネーヴラと夕顔がいない方へと退いていく。同じく残り一人の剣を持つ兵士も背後を守りながら着いていく。他の仲間と合流しなければ、流石に重厚な鎧で身を護っていても無理があると判断したようである。


 前門のジネーヴラ、後門の夕顔。


 賢明な判断である。


「ふへっふへっふへっ……逃がさぬぞ、主ら二人でまた三点頂きじゃ…ふへっ」


 鉄の棒を思い切りの力で投げつける夕顔。ガトリング銃を持つ兵士へと物凄い速さで回転しながら飛んでいく。寸での所で躱した兵士だが、そのせいでガトリング銃の銃撃が止まってしまった。


 兵士が銃を構えた時には、ジネーヴラだけが建物の陰にいるのは分かったが、夕顔の姿は見当たらない。


「……っっ!!」


 ずぶり……


「ふへっふへっふへっ」


 剣を持つ兵士の兜の正面、視界確保の為の隙間に夕顔の脇差のきっさきが半分以上滑りこんでいる。それをぐりぐりと捏ねくりまわす夕顔はにたりとした笑いを浮かべている。脇差から真紅の絹糸の様な血が伝い流れ、夕顔の雪のように白い手が真っ赤に染まっていく。


 そして兵士の身体が数回痙攣すると、だらんと両手を垂らし動かなくなった。


「四点目じゃ……鋒さえ滑り込ませれる僅かな隙間さえあれば殺せるでのぉ……ふへっふへっふへっ」


 ジネーヴラの存在など忘れたかの様に、ガトリング銃を夕顔へと向け発砲する。しかし、夕顔は今しがた殺した兵士の死体を盾にして、じわりじわりと銃撃する兵士へと近づいていく。


 重厚な鎧が仇となった。ガトリング銃の弾丸が鎧に当たりへこんではいるものの、見事に尽く跳ね返している。


「ふへっふへっ……流石、帝国自慢の鎧じゃのぅ。ガトリング銃も形無しじゃて」


「……」


「ふへっ!! 死体とは言え、仲間に対し容赦なく撃ち続けるその心意気!! 嫌いではないぞ!!」


 夕顔はそう言うと、腰にぶら下げている巾着から苦無を二本取り出すと、ガトリング銃を発砲し続ける兵士の兜の隙間へと投げつけようとした時である。


 ガトリング銃の銃口が四方八方へと乱れ、辺りへとその銃弾を撒き散らし始めた。


 そして兵士がガトリング銃を手から滑り落としたと同時に、がしゃんとガトリング銃の上へと倒れ込んだ。

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