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 駐屯地の方から激しい銃声が聞こえてくる。しかも、普通の銃声のように単発ではなく、屋根を激しく打ちつける終わりのない雨音のように止まることのない銃声である。駐屯地で隊長が発砲し続けているガトリング銃の銃声だった。


「な……なんだこの銃声は……」


「クラン帝国が新たに開発し、配備したと言う噂の対狂戦士用の銃ですかね」


 多くの戦線を渡り歩いてきた二人も驚きを隠せない様子である。実際にまだ新兵器を目にしてはいない。しかし、止まることなく鳴り響くその銃声を聞いていると、とんでもない武器だと言うことだけは分かる。銃特有のタイムラグがない。銃弾が続く限り撃てるのなら、幾ら狂戦士とでたまらない。それが数機配置されるなら逃げ場所がなくなり、たちまち蜂の巣にされるだろう。


「来る……」


 ガトリング銃の銃声にかき消されるくらいの小さな声で1103が呟く。963も1103と同じ駐屯地の方を見ながら頷いた。


「クラン帝国の奴らか……それとも、さっきの奴らか……」


 誰が来ても良いように、二体の狂戦士へ臨戦態勢をとるように指示を出す二人。静かに1103 と963が動き出し、お互いに邪魔のならないような適度な距離をとった。監察官の二人も先程のように背中を取られないために、互いに背中合わせとなり辺りへと気を配る。先程から鳴り止まなかった銃声がぴたりとおさまり、森の中に静寂が戻った。


 本当に静かだった。そして、時間がやたらと長く感じる。未だに何者も姿を表さない。1103 と963の勘違いなのか?そんな訳はまずないと言える。彼女らの察知能力は狂戦士達の中でも優れており、今の今まで一度も外したことは無いからだ。


『聞こえた‼』


 こちらに向かって走ってくる足音が二つ。足音を忍ばせる余裕もないほど、かなり急いでいる様子がその足音からも分かる。


 足音の持ち主の姿が見えた。


 ルイーサ監察官とリオニーである。ルイーサ監察官はこちらに気づくと顔をしかめ、あからさまに舌打ちをした。そして、リオニーの耳元で何かを呟くとその肩を三度叩いた。リオニーはルイーサ監察官の方へちらりと目をやるとこくりと頷く。


 それを確認したルイーサ監察官はにやりと笑うと腰のポーチから艶のない茶色の筒を二つ取り出し、その先から出ている紐を引っ張った。イヴァンナ監察官達の頭の中に、山猫と戦ったときの記憶が甦る。そして、ルイーサ監察官がその筒をイヴァンナ監察官達の方と1103 達の方へと投げつけた。


『爆弾か⁉』


 咄嗟に飛び退く四人。しかし、それは爆発せずに大量の煙を辺りへと撒き散らしているだけだった。


「ちっ、煙幕弾だったか‼」


 辺りに煙幕が充満し、互いの姿さえも見えない状況となってしまった。これでは下手したら同士討ちになりかねないことから、イヴァンナ監察官とユリア監察官の二人は笛を短くならして、1103 達へその場に待機するように命じた。


 そこへ、煙幕の中をつききるように走り去る影が二つ見える。ルイーサ監察官とリオニーである。二人はこちらへ振り向くことなく走り去って行く。


「追うぞ‼」


 イヴァンナ監察官の二人は煙幕で前が見えない中を、ルイーサ監察官が走り去っていった方へ追いかけ始めた。


 そして、煙幕がたいぶ薄くなった場所まで来たときだった。前方からくるくると回転しながらイヴァンナ監察官の方へと木の枝が飛んで来たのである。イヴァンナ監察官は避けずに手で受け止めると、それが木の枝ではなく人の腕だと言うことがわかった。

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