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「先遣部隊より駐屯地へ、狂戦士は隻腕の殺戮姫SlaughterPrincess死神少女DeathDollの二体、監察官二名。この先の森で戦闘中!!ほぼ全滅状態です。増援を要請します!!」


 無線から先遣部隊の悲痛な声が聞こえてくる。ルイーサ監察官は無線からの報告を聞いて、隻腕の殺戮姫SlaughterPrincessだけではなく、まさか死神少女DeathDollまで、この戦線へ来ているのは思っていなかった。正直誤算である。


 駐屯地の約百名近くいる部隊とルイーサ監察官率いるリオニーを含めた六体の部隊であれば、ユリア監察官及び隻腕の殺戮姫SlaughterPrincessを確実に駆除する事が可能であった。


 しかし、死神少女DeathDollが参戦するとなれば話しは別である。あの狂戦士は別格。二手に別れて襲撃されたら勝ち目はない。


 もう駐屯地の兵力は削れない。死ぬと分かっていても祖国の為にも、ここで奴らを少しでも食い止めなければならないからだ。


『山猫を馬鹿にしたが、私も同じ運命か!!』


 どんっと机を強く叩き、ぎりぎりっと歯を食いしばるルイーサ監察官。そして、真っ青になり情けない顔をした駐屯地の隊長を一瞥すると、無線のマイクを握り先遣部隊へ増援要請を断る旨を伝えようとした時だった。


「……な、なんだ……あいつらは……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」


「ふへっふへっふへっ」


 突然、無線から何かを見て驚いていた様子の兵士が叫び声をげた。その叫び声が部屋の中に響く。その後に聞こえてくる下品な笑い声。訳が分からず、言葉を失ったルイーサ監察官達が無線機をじっと見つめている。


「な、何が起こった……?」


 ルイーサ監察官が無線のスピーカーへと視線を移し呟いた。


「聞いておるだろう、クラン帝国の蟲共。我らが積年の怨みを晴らしに、地獄の蓋をこじ開けて主らのところへ参ったぞ……ふへっふへっふへっ」


 不気味な声がスピーカーから聞こえてくる。まだ、若い女の声である。しかし、その下品な笑いを最後に無線からは、何も聞こえなくなった。


「積年の怨み……だと?」


 この駐屯地は昔からあったわけでもなく、また、近隣の住民に対しても怨まれる様な事をしたわけでもない。それでは積年の怨みとはこの駐屯地ではなく、ルイーサ監察官に対してのものか?いや、それも無いだろう。一部の者以外には極秘理にこの駐屯地へ配属された事から、予知能力でもない限り、こんなにも直ぐに行動を起こせるわけが無いし、ルイーサ監察官自体が各国間で定められている戦争法に基づき戦っており、卑劣な行為や残虐行為等を行ったことは無いからだ。


 それでは、クラン帝国そのものに対する怨みなのか。それであるなら納得出来る。戦争法が定まる前のクラン帝国が行ってきた他国へ対する侵略行為には、歴史に汚点を残してきた残虐の限りを尽くすものも多々あるからだ。民族浄化、科学実験、新兵器実験、虐殺行為等、挙げていけばきりがない程である。


 特に酷かったのは、極東にある小さな島国への行為だろう。先に挙げた行為の数々を繰り返し、その人口はクラン帝国が侵略する前の三分の一まで減少した。しかし、その島国の皇族を含め、一部の軍、及び島民が島から脱出し、その再興を虎視眈々と狙っていると言う噂も聞く。


「まさか……」


 独特の喋り方……イントネーション。クラン帝国で使役されている奴隷の中にいるその島民の話し方と、無線から聞こえてきた話し方が似ていた。


「……くそっ!!」


 ルイーサ監察官が椅子を蹴りあげた。もし、それがルイーサ監察官の予想通りなら、とんでもない事になる。ハインツ相手にいざこざを起こしている場合ではないのだ。


 その時である。


 ガラスが割れる音と共に生首が五つ、投げ込まれた。生首は、ルイーサ監察官率いるCランカーの狂戦士達のものであった。そして、壊された窓枠に手を掛け、一人の女がゆっくりと入ってきた。


「ふへっふへっふへっ」


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 綺麗な顔に似合わない下品な笑い方をする女。しかし、女は、まだ少女と呼べるくらいの顔をしている。そして、ルイーサ監察官達を舐めまわすように見ると、にんまりと笑い、すっと刀に手を掛け鞘から抜いた。

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