向日葵

月ノゆうね

エピローグ

クリスマスだったから?

今年、1番の寒い日になる。ってテレビの美人アナウンサーが言ってたから?


まさかね。


特別な日になってしまったのはそんな、日常の1部をくりとったような甘い理由じゃねぇけど。そんなの、私が1番わかってる。分かっているんだけど。


カメラを構える彼女に映る私の顔。

塾まで迎えに来てくれた。

写真部に入ったからって、新品のカメラを持ってきて、私に自慢までして。

鬱陶しいって、思いながら。そんなことも幸せだった。今思えば。


突然だった、と思う。

綿だけぱんぱんに敷きつめられたかのような人形が、倒れていた。

車道の真ん中に。

怖かった。それはもう本当に。

なんで、こんなクリスマスの日にって思った。どうせなら、ハロウィンの日に、なんて。

でも、次に認識したのはなんだろう。

その少女に、赤いイルミネーションが、煌々と照らしていたこと?

いや、違う。


安田さんが、血を帯びて倒れていた事だ。


やけに大きく響いたジングルベル。

愛は、何も、出来なかった。


安田さん、今頃生きていたらどうしてたかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る