第30話 降臨の龍鱗

 思ったより移動ははかどって、小さい子たちを含む大所帯だというのに三十分四半刻ちょっとで崖が見えてきた。カイエンさんとネルで行き来したときと大差ない。年少組にはそこそこ辛い移動なのに、前向きに頑張ってる。

 これは、あれか? ぼくのせいか?


・名前:アイクヒル(16)

・職業:守護者(レベル21)

・HP:199/210

・MP:191/210

・スキル:“看護みまもり”“紐帯つながり

・習得魔法(初級):“収納ストレージ”“浄化クリーン”“防壁バリア”“窃視ヴォイエ”“探知サーチ”“治癒ヒール”“回復キュア”“隠遁ステルス

・習得魔法(中級):“増強ブースト”“麻痺スタン”“鼓舞ラウズ


※紐帯親密度:(アーシュネル:60)(ファテル:30)(孤児院:20)(カイエン:20)(ミーアス:20)(ペリル:20)(イーフル:10)(ミルトン:10)(トール:10)(メーアス:10)


 ……やっぱり。

 いくら“深域の森”の魔物を(ネルが)大量に退治したとはいえ、いきなり12から21は上がり過ぎだ。中級魔法の“麻痺スタン”が使えるようになってる……けど、“鼓舞ラウズ”? これも初めて見るな。

 小さい子たちの頑張りと関係あるんだろうか。


「アイクヒル」


 先頭が停止の合図を送って、全体が止まる。カイエンさんが呼ぶ声に、ネルがぼくを見て頷いた。後方の守りを一時任せて、列の先頭に向かう。途中でイーフルとすれ違った。入れ替わりで年少組のサポートに入ってくれるようだ。


「どうしました」

「妙なんじゃ。まだ崖が明るい」


 四百メートル四半ミレほど先に、崖に出る穴が。日中の数刻しか日の差さない地底なのだから、暗くなっていもおかしくないはずだ。


「理由はともかく、明るいのは良いことじゃがの。問題はあれじゃ」


 子供が泣いているような声。崖か、その下の森から響いているように聞こえる。子供の泣き声にしては、異常なほどに大きい。


「もしかして、新種の魔物とか? 子供の泣き声で、人間を捕食するような」

「わからん。そんなもんは聞いたことがないのう」

「ぼくが見てきます。みなさんは、ここで待機。いざとなったら……」

「わかっとる。女子供だけは何としても逃してみせるわい」


 ぼくは“隠遁ステルス”を掛けて、崖の出口に向かう。戦闘能力はないけど、逃げ隠れするのは得意だ。

 “探知サーチ”の範囲に魔物らしき反応はない。崖の出口に差し掛かったところで、明るい理由がわかった。天井に見えていた地表につながる開口部あなが、かなり大きく崩れている。光の差し込む角度が広がって、いままでより日照時間が伸びたのだ。カイエンさんのいう通り、それ自体は良いことだ。崩れた理由は気になるが……


「うぇッ⁉︎」


 森を見下ろしたぼくは、思わず声を上げる。

 開口部が崩れたは、わかった。何がどうしてそうなったのかのは微塵もわからなかったが。


「……たぁぁああしゅけてぇええ……!」


 森の中心に堆積した落下物が巨大な山になっていて、その頂上に頭から龍が刺さっていた。

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