第27話

 新学期が始まり1ヶ月が経った。俺と紅愛は何故か校内の名物のようなものとなっており、俺らを妬む人の方が少なくなっていた。

 俺も雅紀以外に新しい友人ができ、順調にクラスに馴染めている……はずだ。紅愛は今までの高嶺の花という扱いではなく、常時俺から離れないのを誰かがコアラと比喩し、それが定着して女子からはマスコット的な扱いの方が増えている。それでも容姿は抜群に優れてるし、基本的に俺達に害がなければ普通に接するし、一つ一つの所作が上品だからどうしても高嶺の花という印象が抜けきらないのが凄いところだ。




 そんな春のある日の朝、登校中に朝練をしている生徒を見かけふと疑問が浮かび上がった。


「そういえばさ紅愛」

「どうしました蒼太くん」

「部活に顔出さなくていいの?俺、付き合ってから紅愛が部活に行ってるとこ見たことないんだけど」


 そう……何とうちの紅愛は女子テニス部に所属しているのだ。個人では全国優勝を果たしているほどの彼女なのだが付き合って数ヶ月、彼女は帰宅部の俺と共に毎日帰っており、部活に行っていない。俺が原因で部活を制限しているなら申し訳なさすぎる。


「えぇ行ってませんね。だって辞めましたから」

「……え?今なんて?」

「辞めましたよ部活。蒼太くんとの時間が減りますから。それに続ける気もあまりなかったので」

「……はぁ!?」


 や、辞めた!?まだ紅愛のユニフォーム姿写真とか動画でしか見たことないのに!?


「なっ、え、ちょ……はぁ!?」

「大丈夫ですよ。私がいなくても皆さん強いですからね」

「こ、顧問は……」

「あまり引き止めませんでしたね。残念そうにはしてましたけど」


 まぁ引き止めても無理矢理納得してもらいますけどねと続ける紅愛。では紅愛のユニフォーム姿はもう見れないということだろうか。


「ユニフォームなんて何時でも着てあげますよ?お望みならば今日帰ってからでも着ましょうか?」

「っ!?ほ、ほんと!?」

「え、えぇ……そんなに見たいのですか?」


 俺の様子に少し驚く紅愛。どうやら紅愛は自分がユニフォームを着た時の素晴らしさを理解してないようだ。


「勿論。動いた時にチラッと見えるアンスコとかなんて言うかもう……最高?」

「そ、そうですか……///蒼太くんはそんなエッチな目でテニスを見てたのですね」

「ち、違うよ……紅愛だからそういう目で見てたんだよ」

「っ!け、結局エッチな目で見てるではないですかっ///もう……///」


 紅愛が顔を赤くして俺の腕に顔を押し付ける。前みたいに車登校ならそれでも安心だったのだが今は歩きでの登校なので非常に危ない。


「前見ないと危ないよ。ほら」

「…今まで私は蒼太くんに視姦されていたのですね。全身隈無く舐め回されるように見られていたなんて……」


 顔を離した紅愛が腕を組みながら呟いた。なまじ当たっているだけに何とも言えん。しばらく俺達は無言で歩く。横をチラッと見ると目が合った。


「……蒼太くんの変態」

「返す言葉もございません」

「でもそんな風に見られていたということに喜んでいるのも事実です///だからエッチな蒼太くんのために今日はお家に帰ったら着てあげます。感謝してください」

「ありがとうございます紅愛様」


 それから俺達は他愛もない話で盛り上がりながら学校に向かった。学校にいる間も紅愛が家に帰ったらユニフォームを着てくれるという嬉しさでいっぱいだった。雅紀達に今日は言いしれない気持ち悪さがあると言われたが、そんなことを言われようとも楽しみなものは楽しみなのだ。推しのグッズが発売されると知った時のファンの気持ちを想像してくれ。楽しみだろ?


 そうした楽しみな気持ちのおかげかいつもより学校が早く終わったように感じた。俺は速攻で紅愛を連れて学校を出て家へと帰った。








「着替えてきますけど見にきますか?」

「いやここで楽しみに待ってる」

「……そうですか」


 少し不満げな様子で紅愛がリビングを出ていく。生着替えはまた別の機会にということで。


 紅愛が出ていき静かになったリビングを落ち着きなく歩き回る。


 やはり見に行った方が良かっただろうか……いやいや楽しみは取っておくものだ。

 逸る気持ちを抑えて俺は紅愛を待ち続けた。





「お待たせ致しました……どうでしょうか?」


 時間にして約5分くらいだろうか。俺にはそれ以上に長く感じられたが待った甲斐があった。


「髪も部活の時のように結んだのですが変ではないですか?」

「……」

「……蒼太くん?具合いでも悪いのですか?」


 俯いて反応しない俺に紅愛が心配そうに寄ってくる。しかし次の瞬間俺は顔を上げ、思っていたことを口にした。


「……こう」

「え?」

「最っ高だよ紅愛!」

「ふぇ?え、きゃあ!」


 紅愛を抱きしめ、感想を伝える。


「ポニーテール似合ってて可愛いし、スカートから伸びる脚も白くてすげぇ綺麗だよ!」

「あぅ……///」

「語彙力無くて悪いけどほんとに可愛い!」

「恥ずかしいからやめてください///」


 紅愛は耳まで真っ赤にしてぽこぽこと俺の胸を叩く。その仕草までもが可愛い。


「写真撮っていい?」

「………良いですよ」


 紅愛から離れ、スマホで撮影し始める。しばらくすると紅愛も乗ってきてポーズを決めてくれた。早速お気に入りアルバムに入れる。後でPCにも移す予定だ。




「ありがとう紅愛。めっちゃ可愛かった。着替えてきていいよ」

「……蒼太くんはこれで満足ですか?」


 撮影会も終わり満足したので紅愛を解放しようと思ったのだが、


「え?」

「折角私がユニフォームを着たのですよ?それに今は気分もノリノリです………したくありませんか?」


 紅愛がスカートの裾を摘み、ヒラヒラと揺らす。そんな風に誘われてしまえば男としてやることは1つだろう。


「したい……です」

「では行きましょう♡」


紅愛に手を引かれ、俺は寝室へと誘われた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最近寒くて寒くて仕方ありません。皆さんも体調管理に気を付けてお過ごしください。

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