第14話 遊園地

 チケット購入時に貰った、遊園地園内パンフレットを見ながら、俺と日生は園内を歩いている。


「日生!」

「まず、何から乗ろうか?」


「やっぱり、ジェットコースターでしょ!」


(うっ、可愛い…)


 日生は満面の笑顔で言う。

 駅で日生に会ってから、ずっと溜まっていた苛立ちが、日生の笑顔で自然と消えていく。


(何だ、かんだ言っても、俺は日生が好きなんだな…)


「じゃあ、ジェットコースターから行くか!」


「うん!!」


 日生の笑顔で心が晴れて来た俺は、日生とジェットコースター乗り場に向かう。

 この遊園地のジェットコースターは、全国的にも有名なジェットコースター見たいだ。高低差と落下時のスピードが凄いらしい……


 ジェットコースターは遊園地の花形でも有るため、かなりの待ち時間を覚悟していたが15分位の待ち時間で乗れそうだ。

 搭乗出来る番が回って来て、俺と日生は車両に乗り込む。座席は比較的前の方だ。

 ジェットコースターに乗り込むと、直ぐに樹脂製のシートベルトが係員によって降ろされて、後は出発を待つだけに成る……


「やっぱり、ジェットコースターだね!!」


 日生は笑顔で俺に声を掛ける。


「俺はジェットコースターに乗る事より、遊園地に来た事自体が久しぶりだよ」


「ここの、結構凄いからね!」


 日生はそう言う。


「見たいだね。でも、楽しみだよ!」


『ブ~~』


 日生と楽しく喋っていると、出発ブザーが鳴り響く。

 ブザーが鳴り止むと、車両はガタガタ音を発しながら走り出す。

 搭乗口を出発した車両は、上り坂を昇って行き頂点を目指す……。頂点まで来たら、ジェットコースターのスリルの始まりだ!?


 一気に猛スピードで下って車両が進んでいく!!

 余りの速度に、俺は手すりをずっと握りしめながら、ジェットコースターを楽しんでいる!?

 猛スピードと急カーブの連続で、日生の横顔を見る余裕も無かった……


 ……

 …

 ・


 搭乗口に戻って来たジェットコースター。

 完全に停止すると、樹脂製のシートベルト自動で持ち上がって、近くに居た係員さんが『お疲れさま!』と声を掛ける。

 ジェットコースターの車両から降りる、俺と日生。


「結構、凄かったね!」

「でも、おもしろかった!!」


 日生は嬉しそうに声を掛けてきた。


「本当、凄かったよね!」

「却って怖かった位だよ……」


 俺がその様に言うと……


「もしかして……良輔は、ビビリの方?」


「い、いや、そんな事無いよ!」


「じゃあ、今度はバイキングに乗ろう!!」


 そう言いながら、俺の手を引っ張る日生。ようやくデートらしく成って来た!


 しかし、久しぶりに乗るジェットコースターは、楽しいと言うより本当に怖かった。小学生の時は楽しく感じたのに……


 絶叫系から絶叫系と続きそうだが、日生は絶叫系が好きなのかも知れない…?

 でも、折角……遊園地に来たのだから、絶叫系に乗らなければ遊園地に来た意味が無い!?

 日生に俺は引っ張れながら、次の絶叫系(バイキング)の乗り場に向かった。

 バイキングは10分位の待ち時間で乗れて、バイキングを楽しむ……


 バイキングが『グワン、グワン』と動いて急降下する事に、水しぶきが体に掛らないかヒヤヒヤした後は、フリーフォールに乗って、最初に乗った別のジェットコースターを乗る。

 シャトルループと言い、本当に日生は絶叫系ばかり攻めてくる。攻めすぎだ!!


 最初は楽しいと感じていた俺だが、あまりにも絶叫系が続きすぎて、少し体調が悪くなって来た……

 それでも日生は、また絶叫系に行こうとしているが……俺の体の方が、急激な刺激で、一気に気分が悪く成ってしまった。


「日生…」

「少し休まない?」


「えっ!?」

「良輔、だらしないね!」

「まだ、半分位しか乗っていないよ」


「ごめん…」

「久しぶりの遊園地だから、体が付いて行けない…」


「しょうがないな!」

「なら、あそこで休もう!!」


 日生はそう言って、スナック等が買える売店での休憩を提案してくる。

 俺は何かを食べられる状態では無さそうだが、日生は何かを食べたいのだろうか?

 俺と日生は其処で、小休憩を取る事にする。


 ……


 てっきり日生は、何かの軽食を買う物だと思っていたが、ジュースだけ買って飲んでいる。

 俺は、ジュースは飲めそうでは無かったので、ペットボトルの水を買って飲んでいる。


「本当に顔色悪そうだけど、大丈夫…?」


 日生が俺の体調に気遣ってくれる。


「ん……大丈夫」

「刺激が連続過ぎて、体がびっくりしたようだ…」


「なら、次は軽めの乗り物しようか?」


「うん。そうしてくれると嬉しい…」


 日生は園内のパンフレットを見て、次の乗り物を探している。

 俺はベンチで体を休めて、水分を取って、本当に体を休ませている。


(ここまで、日生が絶叫系好きだとは、夢にも思ってもいなかった…)

(俺の中での日生は、メリーゴーランド等の軽めの乗り物を楽しんで、絶叫系と言っても、コーヒーカップや少し浮かぶ程度の遊具が好みだと感じていたが、全く違った……)


(真央にも、その辺の事も聞いておけば良かったな…。やはり、思い込みは禁物だな…)


「よし、決めた!」

「良輔。今度はウェーブスィンガーに乗るよ!」


 聞き慣れない言葉で『どんな遊具だろう?』と俺は思う。


「それは、絶叫系じゃ無いのだよね…」


「ただの空中ブランコだよ!」

「今までと比べれば軽い、軽い!」


 日生にそう言われて、体調も少し落ち着いてきたので、ウェーブスィンガーに乗る事にする。


 ……


 今までの絶叫系と比べれば、大分マシな方に入りそうだが、それでも空中ブランコだ。

 空中ブランコだから足が着かないし、それに結構な早さで回転もするから、周りの景色がグルグル巡って面白かったが、足が着かないと言う、また別の怖さが有る。


 朝からほぼ絶叫系ばかりに乗っており、日生は直ぐに次の乗り物を提案してくるが、もうすぐお昼で有る。

『遊園地のレストランは、お昼時には凄く混むよ!』と真央に教えて貰っているため、少し早めの昼食にしたい。


「日生…。先にお昼にしょうか?」

「レストランが混む前に?」


「……お昼?」

「うん……良いけど…」


 日生は少々不満顔で有ったが、それでも承知してくれたので昼食の時間だ。

 俺と日生は遊ぶのを一旦中断して、園内のレストランに向かう事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る