第9話 『艶魔魔都』 序

GM:さて、じゃあ始めていきますか。真銀物語 第九話 『艶魔魔都』


一同:おー!


GM:様々な事件を道中で解決しながら、君たちはとうとうトアラン公国に辿り着く。日用品の中にも魔法の道具が溢れ、魔女が箒で空を飛び、石造りの高塔が並び立つ。絢爛豪華、風光明媚な魔都である。クレイモルからの使者が帰ってこないという不穏な話が嘘に思えてくるほど、トアランは栄え、そして穏やかであった。


GM:というわけで目的地に到着しました


リーゼロッテ:「やっと辿り着けましたね。まずは大公アスク様を訪ねるべきかと。賢者として名の知れた方です。真摯に事情を話せば悪いことにはならないでしょう」


ミミィ:「ん~、今のところ違和感は特にないにゃぁ。取り敢えず、使者が着いてるのをこっちで確認しているか訊いてみるにゃ」


ムルダファ:「その大公が怪しいかもしれん。まずは冒険者ギルドや街で情報を集めたらどうだ?」


GM:情報収集、ムルダファさんやサギリさんに任せちゃってもいいくらいだけどね。サギリさんに関しては君たちよりレベル高いし


ヒルダ:「情報収集はどうあれ必要でしょうね?」


ミミィ:「情報は多角的な方がいいってどっかの探偵も言ってたにゃ。そっちもよろしく頼むにゃ」


リファー:「えぇ。まずは分担して情報を集めるのが吉かと」


リーゼロッテ:「ではそうしましょうか。お兄様もそれで構いませんか?」


ユスティーツェ:「異論は無い」


GM:じゃあ聞き込み判定振ってね。あんまり街の詳細が決まってるわけじゃないけど、特定の場所でやるなら宣言よろしく。GMから出せる案としては冒険者ギルド、魔術師ギルド、貴族の家とかかな


ミミィ:じゃあアルケミだしマギテック協会で(コロコロ……)17にゃ


ヒルダ:冒険者ギルドで。使用技能はグラップラー!


リファー:暴力はいけませんよ


ヒルダ:仕方ないでしょ一番レベル高いのがこれなんだから!暴力を振るうわけじゃないわよ(コロコロ……)16。ちょっと出目が悪いわね


ユスティーツェ:スカウトで特に場所は決めずに(コロコロ……)う、出目3で13


リファー:では商店系を虱潰ししらみつぶしに(コロコロ……)出目10で20ですね


GM:おっと、これは大賢者だ。これなら用意しておいた情報は全部抜けるな


リファー:よかったです


GM:まず全員噂話として、最近大公が入れ込んでいる女性がいることを聞けます。で、その女性が大公宅に頻繁に出入りしていることもまあ当然聞けますね


ミミィ:「女にゃ……これはデカいスキャンダルの匂いがするにゃ……」


GM:それと、最近どうにも守りの剣の機能が低下している……というかリファーは、最早この街の守りの剣はほとんど機能していないかもしれないという恐ろしい話すら聞けます


ヒルダ:「……やっばいかも知れないわね……?」


GM:具体的に言うと範囲内であるはずの場所で蛮族に襲われた人がいたとかそういう話ですね。そして、その守りの剣は大公が管理しており、機能が低下したと言われるようになったのは、例の女性が出入りするようになってからだとも


ユスティーツェ:完全に黒だな……


GM:まあ俺があんまり謎解き系のシナリオ得意じゃないから変にぼやかしてPLを悩ませたくもないしね。さて、ちょっとしたイベントがあるのでちょっと待ってね


ヒルダ:何かしら?


GM:武器屋の店主に大賢者が話しかけられます。


武器屋の店主:「アンタのその弓、業物だな……そういえば、この街から3日ほど南西に行ったところにある銀山に、珍しい武器を求めてる鍛冶師がいるらしい。アンタならそいつを満足させられるかもな」


ミミィ:サブクエだにゃ


GM:今回のシナリオには関係無い情報だけどね。別途簡単なシナリオを用意してあるよ


リファー:「珍しい武器を求めている鍛冶師……ふむ、覚えておきましょう」


リファー:ユスティーツェ様がやってたら真銀王の剣を見て言ったのでしょうか


GM:そうなるね。現状魔剣を持ってる3人がトリガーになるイベントだった


ヒルダ:じゃあ作戦会議しましょうか


GM:どうぞ


ヒルダ:「簡潔に言うわね?恐らく、六割以上の公算で大公は蛮族に魅了されているわね?ラミアか、リャノン・シーか、ムルシエラゴかはともかくね?」


リャノン・シー(リャナンシー)は、SW2.0においてムルシエラゴと同様のポジションにいた蛮族です。ムルシエラゴと違い女性しか存在しません。


ヒルダ:「一応、可能性として大公がただ単に女に現を抜かしていてその隙を蛮族が突いている……というのもあるのだけれどね……流石にそれは出来過ぎよね?」


ユスティーツェ:「ふむ、乗り込むか」


リーゼロッテ:「流石に無策というのは……」


ヒルダ:「……その前に少し、調べてみたい事があるのよね?」


リーゼロッテ:「なんでしょう?」


ユスティーツェ:「ただの間抜けなら殴り倒し、蛮族がいれば斬り殺せば…………なんだ」


ヒルダ:「大公家に女が頻繁に出入りしている目撃情報があるのでしょう?――――――じゃあ、出た後、また入るまで女は何処に居るのかしらね?」


リーゼロッテ:「どうなんでしょうね。あまり具体的にどこに住んでいるかみたいな話は聞けませんでしたが……」


ヒルダ:「その時間帯、或いはスパンね?それが夜だけならば吸血鬼の眷属……ムルシエラゴかリャノン・シーでしょう。それが一日より短ければ、ラミアの可能性が高いわね?」ラミアの変身出来る時間は18時間だからね


リファー:「いっそ大公のところに乗り込むよりはその女性を探して調べたほうが早い、と?」


ヒルダ:「えぇ。正式な大使とはいえ、無策で乗り込むよりも証拠固めの一つもしておいた方がいいでしょうね?」


GM:(ふむ、これは……)


この時、ヒルダ含めPL陣はとある種族の存在を忘れています。しかし、ここでGMが誘導し過ぎるのもどうかと思い、一旦放置。


GM:んじゃそういう話を聞くってことでよかですか?


ヒルダ:そうね。折角なのでもう一回それで情報収集しようかしらと


GM:ああ、まあ具体的な質問だし普通に答えますよ


GM:では女性についてですが、基本的に夜に訪れてはいるそうですが、別に昼だからといって来ないわけではないそうです。また、いつも高級宿に泊まっているという共通点を除くと、寝床は一定していないそうです


ヒルダ:ふむ……となるとムルシエラゴの線は流石に薄いわね


ミミィ:「定住はない、となると後をつけるしか女の方だけ〆る方法はなさそうだけどにゃ~……やっぱり衆人環視で正体暴く方が効果てきめんかにゃ?」


サギリ:「冒険者ギルドや遺跡ギルドに本格的な調査を依頼してもいいかもしれませんね。あれらの組織は中立ですから」


ヒルダ:「ギルドに調査依頼を出しつつ一旦大使として屋敷に行ってみて、女が居たなら跡を尾行る……が一番かしらね?」


GM:ギルドは昨今の守りの剣の一件もありますし、二つ返事で了承してくれますね


ヒルダ:よし。じゃあ大公の屋敷に行きましょうか。話す内容的には『これこれこういう理由で四王会議を起こしたいのだが使者と連絡が取れなくてあれー?おかしいぞー?とやってきた使者の第二陣』って事にしましょうか


GM:OK


リファー:ところで使者とか知りません?ということもしっかり聞いていきましょう


GM:では大公宅。普通に通されますよ


この時のGMは内心、思った以上に素早く大公宅に乗り込むPC達に驚いていました。もう少し情報を集めたり、警戒して忍び込んだりするものと思っていたのですが……


大公アスク:「まあ、良く来てくれました。とりあえずお食事でもいかがかな?」


ヒルダ:「いえ、我々は四王会議成就の為に東奔西走する身……此方での仕事が終われば飛んで帰るつもりで御座いますので……お気持ちだけ、ありがたく受け取らせていただきますわね?」


大公アスク:「ふむ、そうですか。それは残念だ」


ミミィ:「む~、最初の使者達は道に迷ったのかにゃぁ~……ああ、そうにゃ。近辺で蛮族に襲われたって話が増えているって噂を耳にしたんだけれども、心当たりはあるかにゃ?」


大公アスク:「そうですなあ、最近は邪王軍のこともありますし、中々剣のかけらが安定供給されませんで」


ヒルダ:「なるほど――――――でしたら、私達が持つ剣の欠片。この総てを今、献上させていただきますわね?」


GM:(お、なるほど)


便宜上、剣のかけらはセッション終了時に即座に名誉点に変換されていますが、世界観的には街に戻り、ギルドやそれに準ずる機関に渡すことで初めて名誉になると考えるのが自然です。最近はずっと旅をするシナリオをやってきましたから、手持ちのかけらの数が多くなっているという解釈は納得出来ます。PLのアドリブから出たゲームの裁定外の行動ですが、これには口を挟む余地がありません。


大公アスク:「ふぅむ、それはありがたいことですな」


ヒルダ:「えぇ。えぇ。守りの剣。その安定した稼動は邪王軍との戦いにおいても必要不可欠ですからね?」


大公アスク:「全く以てその通りです」


ヒルダ:「冒険者ギルドにもこの話は通してありますので、えぇ。一両日中には……事でしょう……ね?」


ヒルダの行動は、鎌かけとしては完璧で、交渉のテーブルに座っているならば確実に相手を追い詰める一手でした。GMとしてもこのロールプレイには舌を巻くしかありません――――――しかしそれは、相手が真っ当な交渉をしようとしている時に限ります。


大公アスク:「ええ。本当にありがとうございます……ではこのお礼として……お前達、こやつらを捕らえなさい」


ヒルダ:「……あらあら。折角チャンスをあげましたのに。コレが貴方の答えかしらね?」


ミミィ:「やっぱりこうなるにゃ……」


ヒルダ:魔物知識振るわね(コロコロ……)18だけどどうかしら?


GM:オーガウィザードですね。前方に5体、後方に5体


ユスティーツェ:計10体だと!?GM!?


GM:……ぶっちゃけると、滅茶苦茶真正面から負けイベに突っ込んでる


ヒルダ:マジ?ごめん……


GM:いやまあ、こんな勢いで突っ込んでくるとは思ってなかったけど、想定してたルート取りとしてはノーマルルートって感じだから大丈夫ではあるよ


ヒルダ:いや、でもなぁ……どうしようかしらこれ


GMもPL達も、ヒルダのPLのロールプレイの技能や推理力に任せすぎたかもしれません。情報を与えきれなかったGMにも責任があります。


ミミィ:怒れる言葉の幻、使うかにゃ?


GM:交渉をやり直す幻視型占瞳か。やってみていいよ


ミミィ:(コロコロ……)出目10で達成値19。何故こうなったかの原因がわかった上でやり直せるにゃ


ユスティーツェ:おお、となれば


GM:そうだね……この屋敷に正面から入ったのが原因で、戻れるのは会話が始まったタイミングまでかな……


ミミィ:詰んでるにゃ


GM:交渉の最初ってなるとそこになっちゃうからね、申し訳ないが……



ユスティーツェ一行、ここで最大のピンチ。果たしてどういった行動を取るのか。待て次回!

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