第18話 お見合いの相手が分かった!

次の日の昼休みが待ち遠しかった。10時過ぎに松本部長から電話があった。例の履歴書と写真を持ってきたから、昼休みに席に来るように言われた。


昼休みに部長の席へ行って、すぐに会議室へ入った。封筒から履歴書とスナップ写真1枚を手渡してくれた。


履歴書の氏名の欄には『田村菜々恵』と書かれていた。その名前を何度も何度も読み返した。また、病歴として胆管がん除去手術と書かれていた。持っている手が震える。


じっと見つめてしまった写真の笑顔は5年前に新宿駅で別れる時に僕が撮ったどこか悲しそうな笑顔とは違っていた。


やはり、菜々恵だった。神様は二人をまた導き合わせてくださった。そう思わざるを得なかった。


「こんなことが本当にあるのですね。私の友人です。5年前に別れて消息が不明だった」


「それは奇遇だ」


「是非、奥様に彼女とお見合いさせていただけるようお願いして下さい」


「願ってもないことで、家内も喜ぶと思う」


「彼女は私のことをよく知っていますので、このお見合いの話を断るかもしれません。それでも何とか彼女を説得してお見合いできるようにお骨折りいただきたいと奥様にお伝え願いませんか?」


「井上君の熱意を家内に伝えよう。まあ、君が承知してくれてともかく良かった。これがご縁というものかな」


僕はすぐに自分の履歴書を作り、写真をプリントアウトして部長に届けた。


それから2週間ほど経って、昼休みの時間に部長から内線電話が入った。


「先方がお見合いするそうだ。家内から今電話があった。それでいつが良い?」


「いつでも構いません」


「場所もどこでもいいか?」


「お任せします」


電話が切れた。10分ほどしてから、部長からまた連絡が入った。お見合いの場所は部長のご自宅のマンションで、日時は今週の土曜日午後2時となった。


その日から僕は菜々恵と会ったらどんなことを話そうか考え続けた。彼女は部長の奥様からお見合いを勧められてしぶしぶとは言え履歴書を書いて渡した。


ということは結婚しても良いと思ったに違いない。良い人がいれば、また、がんの手術をしたことを承知でお見合いを受けてくれる相手ならば結婚しても良いと思ったからだろう。


その相手が僕だと分かった時、すぐにお見合いをする気になったのだろうか? でもお見合することを承知したということは僕との結婚を考えてくれたと思いたい。そのお見合いの日が待ち遠しかった。

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