第2話 恋の衝撃



「なぁ吉原、お前って学校とかクラスに好きな人いんの?」


「いるわけないだろ。というか、俺ができるわけないだろう。」

吉原は即答した。


「じゃー、逆にお前はいるの?神崎さんよ。」

「うん、いるよ。」

神崎は即答した。


「え?」 思わず吉原は、手に持っていた弁当をこぼしてしまった。

「お前、俺たちがこの学校に入学してからまだ一年半だぞ。」


「いや吉原、まだお前がそこで半年だぞ、とか言うならわかるが、1年半も経っている。今のお前のツッコミはおかしい。」


「そんなこと言ってる場合か。それで、その人はどこのどなたなんだ?」

吉原は興味津々に神崎の顔を覗いていた。


「仕方ない、昼休憩はあと25分、十分に語る時間はあるな。」


あれは俺が、入学してから間もない時期のことであった。



「ちょっと待たれよ神崎。入学当時のことを今話すということは、親友である俺にずっと黙ってたということか。」


「時間ないからもう話すよ。」


「おいちょっと待ておい。」




俺は当時、学校にあまり馴染めずにいた。クラスに友達はいない、グループに入ることができない、誰1人話しかける友達もいなかった。

そんな時、俺に優しくしてくれた1人の先生がいた。

英語科の森本先生だ。

森本先生は学校の中でも1、2を争う美女で、足はスラっと長く、体型はスリム。加えて性格は穏やかで、なんと言っても優しい。

教師の鏡であるような人だ。

そして俺は、森本先生の優しさに触れるたびに恋している。その恋がもう止まらないんだ。森本先生を見るたびに、その恋が募っていくんだ。俺は森本先生を、


「もういい、もういいから!わかった、お前の気持ちはよくわかった。というか、今一番驚いているのは、お前が好きな人が先生だということだが、今は深く考えないでおこう。」


「だが神崎よ、森本先生は確かに、学校で美女であるという噂で話題になっているが、俺はあの人がマスクを外している姿を一度も見たことがないぞ。」


「あ、たしかに。」

「お前は一体、森本先生のどこを見てきたんだか。」 吉原は呆れ顔でそう言った。


「じゃーお前、例えば、森本先生がマスクを外したら美女じゃなくなるとか言うのか。」

「そういうわけじゃないけどさ」


「分かった、吉原よ。俺と賭けをしよう。」

「今日帰ってから、各自で教員の集合写真を確認しよう。森本先生の顔が全て写っている。それで、明日、森本先生の顔がどうだったかを2人で話そう。もし俺がそれでも森本先生のことを好きだったら、俺の勝ちな。」


「昼休憩あと5分だし、まあそれでいいよ。」

「決まりな。」





~次の日~



「えーと、今日の欠席は、神崎だけだな。以上。」 担任の出席確認が終わった。


あとで見舞いに行ってやろ。

吉原はこの時、強く思った。











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