6-2
とりあえず、知らない振りしてありがとう。宇宙人さん。
また、足音が聞こえ始める。少し遠くに行ったようだ。
ふう。と一息つく。
その直後、トタトタと軽い足取りで、足音が戻ってきて、わたしを包む残骸の前で足を止める。
ば、バレてる……?
速く、力強くなる鼓動。この小さな空間に響き渡っているんじゃないかと思うくらいにドキドキと鳴っている。
目を開き、この空間の唯一の入り口である隙間の方を見る。すると、空間を覗き込む少女と目が合った。
少女が、にやりと嬉しそうに笑った。
「おねえちゃん、みーつけたっ!」
会ってから今までで一番大きな声。空間が破裂してしまうんじゃないかと思うくらいに、残骸の中で響き渡り、耳の中でキーンと鳴り続けている。
とりあえずこの小さな空間から出なくてはと、両手で耳をふさぎながら、芋虫のように這い出る。
「……ヒイ……もうちょっと、小さい声で……ね」
「あっ……ごめんなさい」
やっと、耳の中のキーンが治まってきた。
服を簡単に払い、ヒイの隣に立つ。
「セイはまだ見つかってないの?」
「うん。前にかくれんぼした時には、おねえちゃんが隠れてたとこにいたんだけどね」
……わたし考えることセイと同じ!?
うなだれているわたしを無視するかのように、ヒイはセイを探し始める。
――見つからない。ヒイは走り回って色々なところを探している。そして何度も宇宙人さんに「セイ知らない? ホントのホントに知らない?」と聞いている。しかし、宇宙人さんは、首を横に振り続けている。宇宙人さんのコミュニケーションツールってジェスチャーだったんだ……。
――呆れてわたしも探し始める。ちょっと高い丘になった場所に登って見回すけど見つからない。ヒイに至っては探すのを諦めて「ホントは知ってるんでしょ! セイには言わないからさ、こっそり教えてよ」と宇宙人さんに尋ね続けている。それでも宇宙人さんは、首を横に振る。意思の固い人だなあ。それとも、本当に知らないのかな?
「もう、降参したら?」
わたしが言うと、ヒイは頬を膨らませ、不服そうに頷いた。
「セイーっ。降参だから出てきてー」
……なんで私が言ってるんだろ?
「もう、仕方がないなあ」
セイの声。その声はかなり近くから聞こえている。
ヒイと二人、きょろきょろと見回してみるがどこにもいない。
「ここ、だよ」
下から声が聞こえる?
見下ろしてみると、隣に立っていた宇宙人さんの足のような触手の間から、セイの頭だけが出ていた。
「ひ、ヒイイイヤヤアァァァっっっ?!」
カッコ悪い悲鳴をあげながら、尻餅をついてしまった。
セイが触手の中から這い出てくる。
「もう、またそんな変なところに隠れてー」
ヒイがセイに向けて文句を言っているが、セイは何も聞いていないかのように無視し、宇宙人さんにお礼を言っている。
わたしがやっとの思いで立ち上がるころ、宇宙人さんが遠くで手を振っていて、セイも手を振り返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます