第5話 ツンデレとヤンデレ その3


「星奈さん、心の声、だだ漏れですよ」

「いいのよ、わざと漏らしてるんだから……」


 あぁ、本格的にダメだよ……この人。


 そんないつも通りな星奈さんから、視線を直たちへと戻すと、直が晴美ちゃんの頭をぐちゃぐちゃに撫でまわしていた。


 晴美ちゃんがひぃひぃと息を切らせつつ、直のされるがまま、やられるがままになっていた。


 あれ? よく見ると喜んでいるようにもーー。


「何、ジロジロ見てんだ……薫」


 声のした方へ振り向くと、竹刀を持った女生徒が呆れた目で俺を見ていた。


 今、入ってきたばかりなのだろう、席には座らずその場に立っていた。


「清美、剣道部はいいのか?」

「あぁ、あっ、で、、でもべっ、別にお前の顔が見たくて早めに切り上げてきたとかそんなんじゃないんだからな!!」


 ……この心の声ダダ漏れ、量産型ツンデレ初号機な彼女は


 堀部清美(ほりべきよみ)


 生徒会副会長であり


 俺のクラスメートだ。


「相変わらず見事なツンデレっぷりだな、、清美」


 ニヤニヤ笑いながら、直が清美の肩を抱く。


「黙れ量産型、百合号機」


 清美が直に向けて、一言、冷たく、吐き捨てる。


「うっ、、酷い、酷いよ。清美……」


 直がひと目で『嘘!』だとわかるような【バレバレ】の【泣き真似】をする。


 がっ!!


「あっ、いや、すまない! そんなつもりじゃなくてな……」

「会長さん、泣かないで下さい……」


 このド下手くそな【泣き真似】を純粋な二人は、直が本当に泣いているのだと【勘違い】したようだった。


 流石にこの反応は予想していなかったのか、少し戸惑った表情で、直が俺に助けを求めるような視線を送ってくる。


 がっ!! 俺は、その視線を無視する。


 自業自得ですよ。会長さん。


「あぁ、みんなかわいいなぁ!! お姉さん、食べちゃいたい……」


 そんな三人を見て至福の笑みを浮かべている星奈さんを横目で確認し、俺は苦笑いを浮かべる。


 さて、暇になったし、借りた漫画でも読むか。


 えーっと、続きはとーー。


「先輩!!」

「薫っ!!」


 晴海ちゃんと清美が、二人して何故か俺を睨んでいる。


 何故?


「何てこと言ったんだよ!! 最低な男だなお前は!!」

「先輩がそんな人だったんだなんて、、晴美、晴美! 失望しました!!」


 とばっちりキタぁぁぁぁぁぁ⤴︎⤴︎!!!!


 いやいや……おいおい……待てよ、二人とも!!


 なんで、俺、巻き込まれてるわけ?


 意味が、わからない……。

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