第4話


マヒロのやつは真面目に仕事してる。

この企画なんか、どうでしょうか?

などと、俺の直属の上司である山野井さんに

お伺いを立てる毎日だった。


だがな。


きれいな薔薇にはトゲがある。

超絶美人な山野井さんは手厳しい。

企画に滅茶苦茶シビア。

会社は有名家具メーカーなのだが、

これ、売れないと思う製品は、山野井さんが

企画会議に出すことなく、その場でバッサリ切り捨てていた。


「こんな、商品、売れるわけないでしょ!

もっと、使う人の立場になって考えなきゃダメ!!」


「そ、そうですか...すみません。

考え直します」


「はい、じゃあ、とっとと練り直して!」


「はい...」


マヒロはしゅんとなり、とぼとぼと肩を落としつつ、

自分のデスクに戻って行った。

さて。

山野井さんは美しすぎる女性ゆえ、

男性社員がこぞって狙ってる山野井さんだけど。今みたく、きっつい物言いだから、

みんな飲み会とかに誘っても返り討ちに遭ってる。


だがしかし。


俺に対しては頗る甘い。


多分だけど。


俺が仕事頑張ってやってて。

同僚に押し付けられた仕事も、嫌な顔ひとつせず、黙々とこなすし。


それに、ヒット商品を何個も連発してるから

実は俺、山野井さんに気に入られてる節がある。


俺が誘わずとも、


山野井さんが、


「今夜、飲もっか?」などと声かけてきてくれるんだ。


あと、俺のこと可愛がってくれてるのは

多分だけど。


最近、俺、アパートからマンションに引っ越したんだけど、その

マンションの部屋が

偶然にも山野井さんとお隣同士で。


俺は引っ越しの挨拶もきちんと菓子折り持参で済ませて、それで、礼儀正しいわね!ってことになって。


更に加えて。




俺が作り過ぎた煮物とかのおかずを

山野井さんにあげたら、やたらと懐かれちゃって。


おそらくだけど。


俺、山野井さんの胃袋を掴んでしまった感がある。



仕事に関して。


美人上司、山野井さんは今、30歳。

勤続8年の大ベテランだった。


バリバリのキャリアウーマンだった。


だがしかし。


家事は苦手と見えて。


「私、料理あんまりできないんだ、、

不器用だからさ。実は家事全般が苦手なの...」


そう言いながら、俺を部屋にあげてくれることは一切なくて。


玄関のドアからチラリと見えた山野井さんの部屋の中は。


なるほど。


ちょっと男の部屋みたいな匂いがした。


つまり、煩雑さが垣間見えたんだ。




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