第26話 手がかりと先導


「道に迷ってる?」


 お、これはどうやら話を聞いてくれる流れのようだ。エルフが止まってこっちに振り向いてくれた。ここで相手の心を掴むしかない!


「そ、そうなんです。薬草を拾いにきてたらいつの間にかこんなところまで来てしまって……」


「遭難ですって大袈裟すぎるでしょ! でもまあ、私が助けてあげる義務も必要もないですからね。私も不肖の弟を探しているところですし……」


「弟? それは俺みたいにここで迷子になってる君に良く似た顔をしたエルフのことか?」


「は? 失礼なアイツのどこが私に似ているというのですか! しかし、ということはその言いぶりからして私の弟を見たということですか?」


「あぁ、多分だがな。本人は断固として迷っていないと主張してたが、迷ってる俺からすると、アイツは完全な迷子だったな、うん」


「ふーん、それはますますウチの弟っぽいわね。でも、それだけじゃ確証が得られないわ。確実に弟と分かる何かがあればいいんだけど」


 確証、か。確かにそう言われると難しいな。俺からすると顔が滅茶苦茶似てるからもう十中八九弟で間違いないと思ってるのだが、向こうからすれば似てないって思ってる弟に似てるって言われてるから、信じがたいよな。


「ん、そういえば方向音痴って言葉にやたら反応してたな」


「今なんて言いました?」


「え、方向音痴」


「はぁ、それは完全にウチの愚弟だわ。このエルフの森で方向音痴って言われて怒るのアイツだけだもん。全く、エルフの恥さらしね」


 お、ビンゴか? って、方向音痴がキーってどういうことだよ。確かにそれじゃあエルフの恥さらしって言われるのも頷けるな。ま、俺も人のことはいえないんだがな。


「じゃあどっちにいるか分かる? って言ってもあなたも迷ってて今一緒にいないってことは望み薄ね。せめてあなたがどっちからきたか暗い分かればらうくなんだけど……」


 どこからきたか、だと? ふふ、ふふふふ、ふはははは! 流石は俺、と言ったところだろうか? 実は、ランダム武器生成で出現した石鹸をあの有名な童話に習ってこっそりと俺が歩いた道に落としておいたのだ。


 別に誰かにバレたらダメってこともないだろうけどな。そして、何より石鹸であるから、パンのように食べられることもない、完璧な作戦だったな!


 ……正直、することもないしもう帰れる気がしてなかったから落としてただけなんだが、それはここでは触れないでおこう。


「大丈夫、俺がどこから来たかくらいは分かるぞ。ついて来てくれ、今も弟さんがそこにいるかは分からないが可能性は十分にあるだろう」


「へぇ、うちの弟よりかはマシみたいね」


「お褒めに預かり光栄です」


「いや、別に褒めてないけど。むしろ貶してるんだけど」


 そんな軽口を言い合いながら俺たちは、俺が狼を倒したところまでやってきた。


「な、なにこれ!? 一体誰の仕業なの? この狼の群れをここまで一方的にやっつけるなんて相当な腕利きに違いないわ。これはエルフにとって危険因子となる可能性もあるわね、ねえ、アンタ何か知らない?」


 ん。ん? 少し話の展開が不穏になってきたな。これって正直に答えていいものなのか? 

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