この武器で一体どうしろと?〜ランダム武器生成というクソスキルを貰った男の末路〜

magnet

第1話 スキル授与

【ランダム武器生成】‥ランダムで一つ武器を生成する。一回の戦闘で同一武器しか生成されず、武器は戦闘終了後に消滅する。一度出た武器は当分の間でない。


「お主にはこのスキルを与える。そのスキルで取り敢えず異世界のAランクになるのじゃ、そしたら次のことを教えてやるわい」


 そう言われて俺の脳みそに叩きつけられたスキルがなんと、このスキルだった。



❇︎



 俺は34歳、銀行に勤めている者だ。いや、者だった。


 きっかけはなんだっただろうか、踏み切りに飛び込んでいった少女を踏切の外に追い出したような気もするし、真っ赤な信号がついている横断歩道を渡ろうとしているお婆ちゃんを庇ったきもするが、イマイチ記憶が曖昧だ。


 ただ、一つ確実に言えることがある。それは俺はもう死んでいるということだ。


 見慣れない白い空間にフワフワとした感覚で立っている。いや、立っているのか浮いているのかも定かではない状態だ。


 そんな、困惑すべき状況でここが俺の天国かと、しっかり自分の死を受け止めていたのだが、突如、白髭もじゃもじゃ爺さん現れて、そんなことを言われたのだ。頭が追いつけるわけがない。


 しかし、俺は今まで長年使ってきて、一番染み付いている言葉を死んだ後ですら、使ってしまった。そして、これが俺の人生の中で一番の後悔になった。


「は、はい」


「ふぉっふぉっふぉー、返事したのー、では頑張るのじゃ、さすればご褒美もあるかも知れんからの」


 俺は取り敢えず返事をしてしまう癖があった。そのため、よく面倒ごとを押し付けられていた。ここでもそれがでてしまうとは……


 三つ子の魂、百まで続くっていうが死後もしっかり続くんだな。


 そんなこんなで俺の意識が遠のいていく。あぁ、俺もとうとう、異世界転生してしまうのか……せめて、真っ当に生きたいものだな。


❇︎


「はっ!? ここは? 夢か?」


 どうか夢オチであってくれ、そう流れ星が通る間に三回は余裕で唱えられるほど強く願ったが、俺の目に最初に映ったのは真っ青な雲一つない青空だった。


「くっそ、あのジジイ、まじで言ってんのかよ」


 辺り一面、草が生い茂っており、木々も生えて正に、ファンタジーな森って感じだな。木漏れ日もしっかり漏れてて、光量もバッチリだ。


「あ、そうだ」


 折角異世界にきたんだし、スキルももらったんだし、絶対アレあるだろ、アレ。


「ステータス」


 口にするかかなり迷ったが、無事出てくれたようだ。って、、は!? これどうなってんの??


ステータス

  名前:〇〇〇〇

  種族:人族

  称号:なし

 スキル:【鑑定】【ランダム武器生成】【スキル取得不可】



 俺が目にしたスキルとはこんなものだった。


 まず、鑑定はいい。なんせ異世界に勝手に連れてこられたら分からないことやものは沢山あるからな、あって損するスキルじゃない。それに、まあ定番だろう。


 そしてランダム武器生成、これはまあ言いたいことが無いわけではないが、最初から言われてたため、辛うじて踏みとどまる。あのクソジジイからすると実験でもしてるつもりだろうか。


 問題児は最後だ。なんだ? スキル取得不可、って、頭いってんのか? このスキルが伝えてくることは、もうスキルが取れませんよ、ってことだけじゃなくて、俺はこれからの第二の人生を鑑定とランダム武器生成、長いな、ラン武器だけで生き抜いて行かなきゃならねぇ、ってことだ。


 はぁ? 無理だろ、こういうのって、成長と共にスキルを獲得していくものだろ? なんで最後余計なもの付け加えたんだよ。完全に蛇足だろ。


 あれか? 俺が他のスキルを使って、倒すことを嫌がったのか? それにしてももうちょっとやり方ってもんがあるだろ、どうしてこうやってゼロか百なんだよ。もう、これで一気に難易度が上がったな、もう生きていける気がしないんだが。


 だが、そうは言っても死にたくはない。よし、なるべく早くあるのか分からないが、人のいる集落、街や村など、を見つけてそこで安全に暮らそう。そうすれば俺のデメリットも少し薄れてくるだろう。


「取り敢えず異世界のAランクになるのじゃ、そしたら次のことを教えてやるわい」


 偶然か、必然か、俺の頭の中にここにくる前に言われたクソジジイからの言葉が思い起こされた。


 そうだ、俺はAランクにならなきゃいけないんだ。そうしないと情報がもらえない。あー、あのジジイマジでクソだな。なんだよ、それそれならもっとマシなスキル寄越せよ! 一体何を考えて俺にこんな苦行を強いているんだ?



 ガサガサッ



 その物音で、俺は冷や水をぶっかけられたように急に冷静になった。どうやら俺に選択権はないようだ。こうなってくると、さっき思い出したのも、このモンスターも全てジジイがチュートリアルとして俺に仕組んだことのように思えてきて仕方がない。


 そんなことを考えていると、物音をした方から、一匹のイノシシが現れた。俺は何故かすぐさま鑑定を発動し、相手の情報を読み取ることに成功した。



・ボア 

 ごく一般的なイノシシ。猪突猛進を体現したような行動をとり、まっすぐ突進することしか頭にない。前方しか見えておらず、側面からの攻撃に弱い。

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