まるで小説のような人生を歩みたくて〜うさぎとモフモフパラダイスをするので、自分を追放した祖国に呼ばれても、もう戻れない...

ガーネット兎

第1話 第一章プロローグ〜追放


 私の名前は、フィン・マウル・ルミエールという。


 ルミエール伯爵家の、次期当主の長男にして、魔法使いである。


 この剣と魔法の世界で、魔法使いとは、大変に希少であり、魔法使いの才能があるだけで、家督が継ぎやすい。


 しかも、ここベアー王国では、軍務関係の役職にも、つきやすいときた。


 正に、私の栄誉は、確約していると言えよう。

実際、ベアー王国の軍務関係の武官に、是非ともと、お声はかかっている。


 私は現在十六歳ーー四年制のバラトニア学園の、最上級生であった。



 本日は、学園主催の武芸大会が催されている。


 この武芸大会は、毎年恒例の行事であり、私は一年の時から、負け知らずの、三年連続の三連覇を達成している。


 歴史上、バラトニア学園で、四連覇を成し遂げた生徒は、今までに三人しかいないとあって、注目を浴びていた。


 あまり、娯楽のないこの世界で、

この武芸大会は、賭けの対象になっていた。


 もちろん私が一番人気である。


 緊張していないと言えば、嘘になる。

なぜなら、こんな日に限って、ベアー国王とその王太子が、見学に来ていたからだった。


 ここでフラグ回収はやめてくれよ! 


 私は、慎重に、試合に臨む。

第一回戦フィンVSペドロ


 ペドロは、二年生の剣士である。

開始の合図が鳴った。


 私はすぐ様、ネクタイを外して、第一ボタンも外して、左手を口元に当ててセクシーなポーズを決める。


 よし! セクシー力が上がって来た!! 

私は、ペドロの剣が届く前に、魔法を唱える。


「エアロジャケン」


 すると、ペドロの足元から、竜巻が起こり、ペドロは、天井付近まで回転しながら、飛ばされて、落下した。


 因みにエアロジャケンとは、風魔法の中級に該当する。


 ペドロは、目を回し、意識を失ったのであった。


「勝者フィン」


 客席からの歓声に応えて、手を振る。




 参加者が多い為に、

すぐ第二試合が始まる。


 第二試合

フィンVSボバンゴ


 ボバンゴは一年生の斧使いである。

開始の合図が鳴る。


 私は再び、ネクタイを外して、第一ボタンも外すと、ウィンクをした。


 全くもって、素晴らしいセクシー力が、みなぎってくる。


 斧使いのボバンゴも、魔法使いの私を相手にするという事で、対策は練っているらしい。


 魔法使いとは、魔力に棒振りされた、他のステータスの低い人間を意味する。


 ボバンゴの巨大な斧が当たれば、私は一撃で負けてしまうだろう。


 だから、ボバンゴは、なりふり構わず突っ込んで来た...しかし、それだと甘い。


「ウォーターバイ」


 私は、魔法を演唱すると、ボバンゴに向かって、濁流の水が押し寄せた。


 その水は、ボバンゴを渦潮の中に引きづり込み、息が出来ずに、ボバンゴは降参したのであった。


 因みにウォーターバイとは、水魔法の上級に該当する。


 私は観客に一礼して、控室に下がる。


 私は控室で、ネクタイを締め直す。

次の試合は、午後に二戦行われて、それに勝てば、明日からの準々決勝に駒を進められる。


 私は、薔薇の花を嗅ぎながら、瑞々しくも、可憐な香りを楽しんでいた。


 周りの試合参加者は、ギスギスしている。

なぜなら、武芸大会で良い成績をあげると、

学園卒業後の進路で優遇されるからだ。


 もちろん、頭脳が高い生徒は、筆記試験の成績を重要視する為に、武芸大会には参加しない。


 つまり、武芸大会とは、武に自信があり、武官を目指す者が、参加する大会であった。


 私の定期試験の成績は、お世辞にも良いとは、言えない。


 わからない問題には、うさぎの絵を描いては怒られ、答えのある問題など、ないのだよと言っては、学友達から笑われていた。


 私は、昼ご飯を食べに、食堂に行く。

すると、


「フィン先輩探しましたよ!!」


 こういう展開では普通、学園一の美少女が声をかけてくれるのが、お約束であるが、

実際、声をかけて来たのは、後輩のゼクスだった。


 ゼクスは、バラトニア学園の一年生にして、魔法使いの男だ。


 ゼクスも貴族の産まれで、セクシーである。


 ゼクスは私を指差してこう宣言する。


「武芸大会は、私が絶対勝ちますからね! 決勝で気高く相見えましょう」


「ーーまぁ頑張りな少年」


 私は、相手が野郎だった為に、適当に相手をして、食堂へと向かう。


「おばちゃん! スペシャル定食のバラ・・多めで」


 私はいつものやつを頼む。

スペシャル定食バラ・・多めとは、私が食堂に直談判して、作らせた、私考案のメニューである。


 もっとも、私はセクシーであるからにして、ファンは沢山いる。それは男女問わずである。


 だからスペシャル定食バラ・・多めも人気メニューである。


 男性は強い男の真似をするし、尊敬する。しかもやんちゃな奴なら尚更だ。


 女性もセクシーな男が好きである。


 しかも、普段やんちゃな私は、よく、野良犬や野良猫を見つけては、ご飯をあげていた。


 女性は、ギャップにも弱いらしい。


 噂は噂を呼び、私は学園一のモテ男になっていた。


 ようやく、スペシャル定食バラ・・多めが、出来上がって、私はお盆を運ぶ。


 スペシャル定食バラ・・多めとは、大豆と野菜とフルーツ中心の定食で、もちろん薔薇が大量に塗してある。


 私は、そんなフルーツと野菜中心の、

昼食を摂る。

別に美味しいとも不味いとも思わない。


 単に必要だから摂取しているだけである。


 私の周りには、遠巻きから、ウットリしている女性がチラホラいる。


 私の絵を描いているファンまでいた。


 私は出来るだけ、姿勢を維持しながら、昼食を進める。


 毎日贈られる私の絵は、綺麗に描いて欲しいからな! 


 私は昼食を食べ終わると、お盆と食器を片付けて、手を振りながら去る。







 武芸大会の控室に戻って来た私は、椅子に座りながら、目を瞑り、次の試合を待った。


 次の試合のイメージトレーニングをしている訳でも、何かを考えてる訳でもない。


 ただただ、お腹いっぱいになり、眠っていたのである。


 チャイルドだろう?


 そこは、武芸大会で睨み合いが続く、控室なのだが、かなりうるさい。だが眠れる。

弟の夜泣きで鍛えられたからな!


 一時間くらい眠っていたであろうか...

私は起こされる。


「フィン! 次はお前の試合だぞ」


 私は、大きな欠伸をして、感謝の意を示す。


「ありがとう! 勝ってくるよ」


 私はそう告げると試合会場へと向かっていった...


 「ファイアバイ」「サンドジャケン」


 私はこの日、一人につき、一魔法しか使わずに、明日からの準々決勝に進んだ。


「おめでとう! フィン!」


 振り向くとそこには、許嫁のチアキが居た。私は笑顔で告げる。


「ありがとう」


 チアキは、モジモジしながら、顔を赤らめた。どうやら手を繋ぎたいようだ。


 私は、チアキの腕を引っ張ると、唇を奪った。


「も〜フィンたら! みんな見てるから駄目だよ〜」


 チアキは顔を赤らめて、猫パンチをしてくる。


「勝利のご褒美頂き!」


 私は笑いながら、一緒に寮へと戻ったのであった。






 次の日、いよいよ準々決勝が始まった。

準々決勝は、去年確か、決勝で当たった、ラムダだ。ラムダは剣士である。


 ラムダは、私を見つけると、意味不明な宣言をする。


「今年こそは、お前に、魔法を二つ以上使わせてやる」


 私は、首を捻る。

どうやら、ラムダは去年の決勝で、私の魔法一撃で、敗れた事を悔いているらしい。


 そもそも私は、今までの武芸大会で、一試合につき、二つも魔法を使った事があまり無かった。


「私からもお願いするよ! 魔法を、二つ以上使わせてくれ! 場が盛り上がらないからな」


 ラムダは顔を真っ赤にして、地団駄を踏む。


 準々決勝

フィンVSラムダ

試合の鐘がなる。


 何とラムダは、突っ込んで来ずに、距離を取る。


 魔法使い相手には、ただただ悪手でしかなかった。


 私はいつもの様に、ネクタイを外して、第一ボタンも外した後に、第二ボタンまで外してやった。


 最早、セクシーが止まらない。


 加えて、床に寝転がり、セクシーなポーズをとり、魔法を演唱した。


「ダークジャケン」


 するとラムダは、「ピッパラぽっぽ〜」と訳のわからない単語を発した後に、泡を吹いて、倒れた。


 因みにダークジャケンとは、闇魔法の中級に該当する。闇に引きずりこんでやった。


「勝者フィン」


「ラムダごめんね! 今年も一つの魔法で終わらせてしまい...」


 私はその後、準決勝の相手の、ポパイが負傷につき、不戦勝で決勝に進んだ。


 決勝の相手は、やはりゼクスだった。

試合は見ていないが、ゼクスも余裕で、勝ち進んだのであろう。


 魔法使いとはそれ程までに、強力な存在であったのだ。


 いよいよ決勝戦

フィンVSゼクスが始まる。


 観客席では、フィンと書かれた横断幕が、チラホラある。


 私は、観客席に向かって、投げキスをする。

観客席からは、黄色い声援が飛んでくる。


「フィン先輩、貴方の時代は終わる!」


 ゼクスはキザなポーズで私を挑発した。

私は何でもないかのように、王者の風格で告げる。


「あーそうだね! 俺は今年で卒業だからな」


「ち、がーう! 私がフィン先輩を倒して、貴方の時代を終わらせると言っているのだ!」


 ゼクスはまるで、日差しを浴びたい花の弁の様に天井に向かい、手を広げた。


 魔法使いは、頭のおかしな奴が多いのであろうか? 私はゼクスを見てそう思った。


 私は、手をヒラヒラさせて、審判に、試合の開始の鐘を催促する。


「第九百六十九回武芸大会の決勝戦開始!!」


 私はすぐ様、ネクタイを外して、第一、第二ボタンも外して、薔薇を手にとる。


 ゼクスも、ネクタイを外して、第一、第二ボタンも外して、百合を手に取る。


 緊迫した雰囲気の中、ゼクスが仕掛ける。


「ファイアジャケン」


 炎の網が私を襲う。

因みにファイアジャケンは火魔法の中級に該当する。


「ウォータージャケン」


 私は、水の波を起こして相殺した。

因みにウォータージャケンは、水魔法の中級に該当する。


 ゼクスは、百合の花に願いを込めながら、

必死に魔法を演唱する。


「エアロジャケン」


 すかさず、私は自分の地面に向けて魔法を放つ。


「サンドジャケン」


 ゼクスが、私の足元から、竜巻を起こそうとした為に、その竜巻に対して、対抗魔法である、土魔法をぶつけて相殺した。


 因みにサンドジャケンは、通常、地割れを起こして、敵を地中に沈める魔法である。


 私もゼクスも一歩も引かない、名勝負を演じる...


 ゼクスが、「ウォータージャケン」を使えば、私は「ファイアジャケン」で相殺した。


 その後、ゼクスが、「ファイアジャケン」をまた放って来たので、私は「ウォータージャケン」で相殺した...


 最早ラチがあかないので、私は、奥の手を出す。正直言うと、実戦で使うのは、初めてである。


 私は、薔薇の花に祈りを込めながら、その魔法を唱える。


「ランダム魔法」


 すると、何故かわからないが、天井から、ハンマーが現れて、ベアー王国の王太子の頭にヒットした。王太子は気絶状態だ...


 私は顔が真っ青になる。

ゼクスもぽかーんと口を開けている。


 ベアー国王はすぐ様、言い放った。


「国家反逆罪で、フィンを捕らえよ」


 兵士が、現れて、私の回りを取り囲む!! 

私は、大声で叫んだ。


「無実だ〜〜ッ!!」


 しかし、私は縄を括り付けられて、牢屋に入れられてしまった。


 そして、厳正なる裁判の結果、私は貴族の身分剥奪の上、国外追放処分を食らってしまったのであった。


「このタイミングでフラグ回収来たか〜」


 私が何故この台詞を吐いたのか、何故セクシーにこだわったのかは、ちゃんとした理由が存在したのである。


 まずは、そもそも私が、この世界に来た理由、生い立ちから細かく見ていこう。

長くなるが、勘弁して貰いたい。

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