030 取材

――――――すごいです!おめでとうございます!今度のデート(?)とっても楽しみです!



「むふふふふ…。」



ニヤニヤが止まらない。どうしよう、このまま動画撮影が始まったら、俺のニヤニヤ顔が全世界に配信されてしまう。恥ずかしい。



―――ありがとうございます…俺も楽しみです!…っと。



「ああ、いたいた。ダイキ先生。」



インテグラルの結城ゆうき社長だ。俺のことを探していたらしい。撮影まではしばらくあるはずなのだが、何かあったのだろうか。



「あ、社長さん。何かありましたか?」



「実はね、取材の依頼が来ているんだ。慌てることじゃないんだけど、撮影まで少し時間もあるし、先に済ませちゃっても良いかな、と思ってね。あ、もちろん受けるかどうかは自由だけど。」



ゲーム関連雑誌の取材らしい。取材なんて初めてなのだが、俺には強い味方がいる。そう、しゅん。有名動画実況者として、多くの雑誌で取り上げられている。当然ながら、取材を受けた経験も豊富。



「わかりました。よろしくお願いします。…俊、よろしく。」



「ん…俺?あ、そういうことね。任しといて。」



俊が自分の胸を叩く。大船に乗ったつもりでいよう。



「じゃあ、会議室の方へ。あ…えーっと?」



そういえば社長さんと俊、初対面だった。



「あ、初めまして。古川俊です。大樹だいきの友人兼スポンサーです。」



「これはこれは。インテグラルの結城です。」



動画投稿者であることは言わないのだろうか。まあ、その選択は俊にしかできないので、俺がタッチするところではないか。





取材は思ったよりもフランクな感じで始まった。緊張していた俺としては、大変にありがたい。あと、取材に来た記者さんと俊、知り合いだった。どうやら前に取材を受けていたそう。



「それではダイキ先生。よろしくお願いします。まずは、優勝おめでとうございます。」


「ありがとうございます。」


「今回が初出場ということですが、FPSを始められたきっかけなどありますでしょうか?」



嘘をつくわけにもいかないので、素直に話す。



「あの…お恥ずかしいんですが、地方大会の優勝賞品に目がくらみまして…。」


「優勝賞品…ですか?」


「はい。あ、ゲーム機です。最新の。今、売り切れててなかなか買えないやつ。」


「なるほど!では、それがFPSとの出会いだったということでしょうか?」


「レトロな格闘ゲームは少しやっていたんですけど、FPSを触ったのは地方大会のエントリーをしてからですね。」


「まだ半年も経っていないじゃないですか!すごいですね。」


「いえ…たまたま相性が良かっただけでして…。」



主に反応チートと。



「そしてやはりダイキ先生の代名詞と言えば、カウンターだと思うのですが、ずばり、カウンターのコツはなんでしょう?」



ズバリ聞かれた。実は反応チートなんです…と答えるのは気が引ける。あんまり明かしたくないというか、センシティブな部分には触れられたくない。少しぼやかそう。



「そうですね…よく見ることですかね。基本的にカウンターは後手に回るものなので、相手に集中することがコツだと思います。」


「なるほど。どっしりと構えることが大切なのですね。そんなカウンターとともに、初出場にして全国大会へと駆け上がられたわけですが、初戦から振り返って、印象深い試合などありますでしょうか?」



と、まあ、こんな感じで取材は進む。途中、俊の助け舟に救われるシーンはあったが、おおむねうまく対応できたと思う。話が結構盛り上がり、撮影開始ギリギリまで取材は続いた。

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