魔法通り5時31分 ~騒々しい我家~

古博かん

01. この世は不思議な入り口で溢れている

 この世界は、数多くの不思議な入り口で溢れている。


 例えば、普段と全く同じ習慣、行動を繰り返していただけ——だとしても、ふいと曖昧な世界の境界線に足を踏み入れてしまい、気が付くと見知らぬ土地、人々の中に紛れ込んでしまう——そんな事例ケースなどが典型だ。


 無事に、何事もなく戻ってくる人もいれば、何度も行ったり来たりしてしまう人、あるいは半永久的に姿を見かけなくなる人も、世の中には一定数存在しているという。


 ある人は、それを『魔界の入り口』などと言うし、またある人は『異世界への扉』あるいは『別次元の世界』などと表現する。


 科学的に証明を試みようとする人もいれば、心霊オカルト的に騒ぎ立てる人もいる。迷信や言い伝え、民話や伝承など信心深い人は、神や精霊の仕業と信じて後世に口伝や書物を残そうと試みる。


 古来より日本にも、「神隠し」や「六道の入口」などといった言葉が残っているが、それだけ身近に『何らか』の存在を感じていたということだろう。


 これは、そんな日常に潜む『不思議』の一つを、ひょんなことから体験した、とある少女の物語である。

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