第20話 初めてのクリスマスデート(3)(by 純花)

「純花の手、あったかいね」


 冷たい手をきゅっと握ると、ひーちゃんはそう言って笑う。その笑顔は本当に何も、意識してなさそうでもう、悔しすぎる。


 ああ、こうなったらもう、なにがなんでも『デート』を意識させてやりたい。

 私はそう、決意に燃えるのだった。


 今日のデート場所の繁華街は、普段から若者たちで賑わう有名な場所で、さすがクリスマスイブだけあって、今日も人混みがすごい。


 だから握った手は自然とそのままつないだ状態で、私たちは交差点を渡る。冷たかったひーちゃんの手は、歩いているせいなのか、それとも私の手の温度と中和されたのか、なんだかさっきよりも温かく感じてくる。


 ああ、ダメだもう。結局、こんなことで私ばかりがドキドキしてしまうなんて。私がこんなに悶々としているのに、ひーちゃんは、なんにも気にしていないように言う。


「クリスマスって感じだねー。ほら、おっきいツリーもあるよ!」

「えっ……あ、ほんとだ! きれい!」


 ひーちゃんの指差す先には、デパートかなんかの出している大きなクリスマスツリー。シンプルな赤と金の球のような飾りがついている。私の好きなタイプの色合いだった。


「純花、赤、好きだよね」


 ひーちゃんはにこっと笑う。さすが、私の好きな色もちゃんと把握してくれている。そういうところがもう、本当にずるい。


 しばらく街のクリスマスの雰囲気を楽しみつつ、ぶらぶら歩く。そのうちに、お昼近い時間になってきた。


「寒いし、どこかお店入ってゆっくりしようか」

「うん、そうしよー」


 外はだいぶ冷えてきていて、空も少し曇り気味で。なんだか雪でも降り出しそうな雰囲気だった。むしろ降ってくれたら、ホワイトクリスマスで素敵だなーなんて、ちょっと思ったりもしちゃうけど。


「純花、どこか行きたいところある?」

「うーん、なんだろう……。あ、なんか甘いもの食べられるところがいいなー」


 実はさっき、歩きながら見つけた屋台で、二人してチーズドッグを食べたところだったから、なんだかもう勝手に、デザートという気分になっていた。


「甘いものかー。……あっ! あそこなんてどうかな?」


 視線の先にあったのは、私の大好きな赤いもの。


「リンゴ飴!? こんなところに専門店なんてあるんだ!」

「なんか入れそうだし、行ってみようか」

「うん!」


 お昼の時間だったということもあって、リンゴ飴のカフェにはすんなり入ることができた。


 私はリンゴ飴と一緒に100%リンゴジュースを頼む。『どんだけリンゴ好きなの』ってちょっと笑われたけど、好きなんだからいいんだもん。


 ひーちゃんが頼んだのはホットコーヒーで、ブラックで飲んでいてなんだか大人って感じがした。


「苦くないの?」

「まあ、苦いものではあるけど、美味しいよ。……ちょっと飲んでみる?」


 そんなことを言ってカップを差し出してくるのだけど。


「え、いや、苦いのダメだから……やめとく」

「そっか」


 もう、間接キスとかさ、そんな言葉が頭に浮かんじゃってダメ。本当にもうダメだった。

 私ってば、もう、どんだけひーちゃんのことが好きなんだろう。


 ああ、もう帰りたい。いや、帰りたくない。

 帰りたくないけど、帰りたい。

 そんな思いに苛まれていた。

 

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