第4話 安定期とは言うけれど(by 実璃)

 妊娠16週。5ヶ月に入った。いわゆる安定期というやつだ。


 神社に行って、腹帯をもらう。

 菜瑠は、『そんな大昔の習慣、やらなくても……』なんて言うけれど、やっぱり何があるかわからないんだし、すがれるものにはすがっておきたいのが人情な気もする。


『実璃ーおなかすいたー』


菜瑠が呼ぶ。


 食べれるようになったのは、それだけで幸せなことだ。

 そろそろ栄養バランスも考えなきゃと、私はますます料理に気を使う。


 それにしても、妊婦は食べれるものに制限があるから、大変だ。


 私も菜瑠が妊娠するまで、そんなこと全然知らなかったのだけど、ナチュラルチーズとかお寿司とか、非加熱のものは避けたほうがいいらしい。


 たまには外食をしたいという菜瑠のために、時々お店選びをするけれど、これもなかなか大変なのだ。


「ベビちゃーん。ママだよー」


 菜瑠がお腹に話しかけている。

 ちょっと前からすると、考えられない意外な姿に、私は安心したり、ほっこりしたり。


「実璃、来て! ちょっと、今、動いたかも!!!」

「え、ほんと!?」


 私は菜瑠のお腹に耳を当てる。反応はなし。


「さっきまで動いてたのになあ」


 どうやら、私が触ると、止まってしまうらしい。

 よくあることらしいけど、結構ショックだ。


「ベビちゃーん、こわくないからね。みーちゃん、待ってるからねー」


 めげずに話しかけて行こう。


 そういえば、菜瑠か新婚旅行に行きたいとか言い出したけど、個人的には、マタ旅はなんか怖いんだよな……。


 でも、なるべく近場で、一泊二日とかで、どこか行けたらいいなあ、とも思う。


 安定期とは言っても、悩みは尽きないものなのだった。



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