第3話 日曜、アゲイン







翌朝、日曜日。


やっぱり雨。



傘さして、お散歩のふり....でも


ほんとは、あの、ごみ捨て場が気になって。


「あの」日曜日。きょうの事だけど


どうして、ゴミ捨て場に行ったのかなんて

覚えてない。



..やっぱり、ルーフィが誘ってたのかしら....



わたしは、少し早足で

あの、ごみ捨て場に行ってみた。




でも。


あの、ぬいぐるみは無かった。




....どうして?




考えてみた。




でも、わからない。



ルーフィーは、「夏への扉」を開けて

帰ってくるって行ってた。



夏への扉ってどこだろう。



バーゲンセールのキャッチコピーみたい、って

思ったら

なんとなくおかしくなって、笑顔になった。



「なんとかデパートに、夏への扉が開きます」なんて。




そう。



彼はきっと帰ってくるって言ってたんだから。



魔法使いの主人、その眠りを覚ます

資格を持つ人を探しに来た。


そういって。



わたしに、そんな資格あるのかな.....


でも、ルーフィーはそう言ってた。



彼が現れたら、聞いてみたい。



本当にわたしでいいの?って。






結局、ルーフィーには会えなかった。


それはそうよね、と


回想するとそう思う。

時間旅行した旅人が、その痕跡を残す訳はないし...




でも、なぜわたしの記憶に残っているのだろう。




..わからないな。


雨の中、傘をさして歩いていたら

おなか空いちゃった。



キッチンには、昨日のカレーが残ってたので

ブイヨンでのばして、スープカレーにしてみた。


ひと味足りないな、なんて思いながら食べた。





おなかいっぱいになったら、眠くなっちゃった。



部屋に戻ってお昼寝...なんて思って。


ごろん、としてたら


いつの間にか夜だった。かな.....


でも、ルーフィーはそう言ってた。



彼が現れたら、聞いてみたい。



本当にわたしでいいの?って。






結局、ルーフィーには会えなかった。


それはそうよね、と


回想するとそう思う。

時間旅行した旅人が、その痕跡を残す訳はないし...




でも、なぜわたしの記憶に残っているのだろう。




..わからないな。


雨の中、傘をさして歩いていたら

おなか空いちゃった。



キッチンには、昨日のカレーが残ってたので

ブイヨンでのばして、スープカレーにしてみた。


ひと味足りないな、なんて思いながら食べた。





おなかいっぱいになったら、眠くなっちゃった。



部屋に戻ってお昼寝...なんて思って。


ごろん、としてたら


いつの間にか夜だった。

気が付くと、「あの」日曜日と一緒に

星が綺麗で。




なんとなくわたしは、屋根裏部屋へ行ってみる。

出窓を、あの時は乗り越えて....



滑落したんだ。



もしかして....


わたしは、反射的に

出窓を乗り越えた。


でも、何も起こるはずもない。





お屋根の下、父のお部屋からは

ショパンのメロディ。


..あの弾き方は、小山実稚恵さんね。

favorites chopin、という

彼女の好みの選曲で綴られたアルバムだった。


わたしは、でも

あまり、こういうベストものは好きじゃなかった。

今、思うと若さ故の気取り、なのだろう。

作曲者の意図通りに演奏順をするべきだ、なんて

スノッブしていたのだろう。



練習曲10ー3、「別れの曲」が流れた。



...ほら、ね。


なんて、有名すぎるこの曲を喜んで聞いている

父をミーハーだなぁ、なんて


思えば、ほんとに恥ずかしい高慢な気持ち。

でも、それもルーフィとのことで

気持ちがもやもやしてたから、かもしれなかった。









...そうね。



ため息をつくような、そんな気持ちで

わたしは、一階の屋根の稜線に腰掛けて

遠い水平線が暮れていくのをぼんやりと眺めた。



丘の上のこの家からは

岬が、のどかに水平線と戯れているようにも見える。


夕暮れになると、空と海との境が

だんだん、分からなくなってきて。


そんな瞬間が好きだった。




...ルーフィ....



彼は、屋根が好き、って言ってたから

ひょっとして、もう帰ってきてるかも。



...ルーフィ!



彼が、そばにいるような気配を感じて

わたしは、振り向こうとした。




...そうね。



ため息をつくような、そんな気持ちで

わたしは、一階の屋根の稜線に腰掛けて

遠い水平線が暮れていくのをぼんやりと眺めた。



丘の上のこの家からは

岬が、のどかに水平線と戯れているようにも見える。


夕暮れになると、空と海との境が

だんだん、分からなくなってきて。


そんな瞬間が好きだった。




...ルーフィ....



彼は、屋根が好き、って言ってたから

ひょっとして、もう帰ってきてるかも。



...ルーフィ!



彼が、そばにいるような気配を感じて

わたしは、振り向こうとした。

だけど、三角屋根の稜線は足下が怪しい。


小鳥が、風の強い時

小枝でふらふらするように

わたしは、バランスを崩しそうになった。



「あ!....」



後ろに転ぶ!



背中を反らしてみたけれど、でも

ゆっくりと後ろに落ちてゆき...



...わたしって、バカ...



今度こそ人生は終わりだわ....



そう思っているわたしには、ショパンの別れの曲が

この世との別れ、葬送行進曲のように聞こえた(笑)






あれ?





思わぬ感覚に、わたしは気づく。

ふわふわとした、大きなものに支えられている。



..そう、天国ね、天国の雲さんだ。



♪天国良いとこ一度はおいで(笑)


なんて、ショパンが歌う筈もない。




「天使でなくて残念だったね」




透き通ったその声の主は....!




「ルーフィ!」




ほんとに、ほんとに天国がやってきた。

too much heaven!




ショパンのメロディは、英雄ポロネーズに変わっていた。

いままで、

あまり好きじゃなかったけど、この瞬間

わたしは、ショパンも小山さんの演奏も大好きになった(笑)



いままで、

あまり好きじゃなかったけど、この瞬間

わたしは、ショパンも小山さんの演奏も大好きになった(笑)




「無茶するなぁまったく。夏への扉を無理矢理こじ開けようとしたのは君がはじめてさ」




ルーフィーは、ほほえみながらそう言った。


彼の腕の中にいると、しあわせ。

気が遠くなるみたい。




「...なんとなく、ルーフィーがそばに来ているみたいな

気がして」


わたし、素直にそう言った。



「....君は、本物かもしれないな。」


ルーフィーは、真顔でそんな事を言う。



そこに、魔法使いがいる、と言う事が感じ取れるのは

能力がある可能性がある、と。



「...だから、最初から僕に出会えたのかな。」

ルーフィーも、それが偶然かどうかはわからない。


そう言っていた。


「でも、どうして戻ってこれたの」



わたしは、ルーフィに支えられたまま

三角屋根の稜線で、そう尋ねた。


父の部屋から聞こえる音楽は

ポリーニに変わった。

きらびやかなsteinway&sonsの音色、心地よい。



「うん、まあね...君は能力があるみたいだから

まあ、見られてもいいだろう、って言われて」


ルーフィーは、空を仰いで。



「閻魔大王様みたいな人に?」

とっさに、わたしはイメージした。

デーモン小暮みたいな人が、マントを着て

パルテノン神殿みたいなとこでルーフィを見下ろしてる図。



ルーフィは、笑って

「そんなのじゃないけど」と。



軽い笑顔の彼って、とってもさわやか。

かわいいな、なんて

わたしは、ちょっとときめいたりして。



「でもね」ルーフィーは

すこし真顔になって。



ルーフィーのご主人の、眠りを醒ますキッカケを

わたしと探し当てるまで、もとの世界に戻れないんだ。と


そんな風に、さらりと言った。



「ちょっとまって、それじゃ

わたしとずっと一緒にいるってこと?」



それは、ちょっと困る。

だって、それじゃルーフィと同棲してるみたいじゃない。


「大丈夫さ、心配ない。」



もともと、ほかの人に見られちゃいけないんだから

誰か居る時は、ぬいぐるみをかぶってるから、って。

ルーフィーはほほえみながら。





...でもなぁ。部屋に一緒に居るって

ちょっと恥ずかしいな。



ぬいぐるみ着てたって、中身はルーフィなんだし。




「じゃあ」とルーフィは

ぬいぐるみのわんこに戻った。



わたしは、ルーフィーを抱えて

出窓から屋根裏に戻った。


屋根裏部屋、ちいさいころ

子供部屋に使ってたから...



「そうだ!この部屋使ってよ、ルーフィー」




「いいの?」



「うん、わたしも、その方がいいもの。」




「ふぅん、僕はどっちでもいいけどな」


と、飄々とルーフィーは。


でも、ぬいぐるみ着てると

なんか、その台詞がちょっと似合わないみたいで

わたしはくすり、と笑った。


ルーフィーは、わたしを見上げて


にっこり、と笑った。


二回目の日曜日は、なんかラッキー。







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