第34話


そういう思いがあった。

スマート・フォンの電池が切れて

途切れてしまった最後の会話。

泣いていたようだった17歳の薗子を

僕は、21歳の薗子の穏やかな顔から、想像した。


けれど...ちょっと連想ができないほど

目の前の彼女は、優しい笑顔だった。



「ごめんなさい...よく覚えていないの。

なんとなく、だから...。」

21歳の薗子は、申し訳なさそうにそういうので

僕は、ちょっと恥ずかしくなり、ごめんなさい、と謝った。


いいえ...と、静かに微笑んだ21歳の薗子は

確かに、17歳の薗子と見た目は似ている。

けれど...やっぱり違う。







僕は、帰りのバスの中で、スマート・フォンをずっと

操作していた。


携帯を持っていなかった頃、バスの中などで

そうして電話を操作しているのを見て

なんとなく、羨ましいような、でも、ちょっと恥ずかしいな。

などと、思って見ていたものだった。

もし、自分が携帯を持ったとしても、バスや

電車の中で操作したりすることは無いだろうと

想像していた。

でも、そうならなかった。


携帯、ではなくて、その向こう側にいる人と

ふれあいたい、そういう気持ちは分かるなと

僕は思うようになっていた。


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