第4話 救出

「やっぱりこうなると思ってたんだよね。炎舞」


声と共にハクが現れ、私達の周りを炎が囲む。見た目とは違い、内側に居る私達が熱さを感じることは無く、外側にいる騎士たちだけが熱さにより近づけなくなっている感じだ。さすがにこの炎の壁を突破してくる者は無く、火が消えるまで様子を見るしかないようだ


「さあ、逃げるわよ」


「えっ、どうやって?」


「私の手に掴まって」


私と千佳がハクの手を取ると同時に、一瞬で風景が変わる。自作したと思われる木の建物や、木の柵、水汲み場などがあり、一見して自給自足している集落の様な感じだ


「ここが私達の本拠地よ。歓迎するわ、同じ蟲人としてね」


そして、木の建物からぞろぞろと人……と呼んでいいかどうか分からない者たちが出てきた


「ひっ、虫!」


「あっ、違う違う、怖がらなくていいから。ここには蟲人しか居ないよ」


「でも、どう見てもさっき襲ってきた虫と変わらないわ!」


「失礼なやつだな。まあ、そう言われても仕方が無いとは思っているがね」


見た目がコガネムシっぽい蟲人がしゃべる。声だけ聴くとどっかで講義している教授っぽい


「しゃべれるの?」


「当り前さ。蟲人は見た目はこうだけど、中身は人間のままさ」


「そう言う事、だからあなた達も早く慣れなさい」


早く慣れろと言うが、ハク以外に人に見える者は無く、正直襲ってきた虫と全く差が分からない。しゃべらなければ蟲人かどうか分からないのは困る


「私は分かるよ。この目……複眼になってちょっと視界に酔ってたけど、慣れたら蟲人は区別できそうだよ。何かあれば私が注意するよ」


今まで黙っていた千佳がしゃべる。目が複眼になったおかげか、千佳には区別できるようになったらしい。あれ? 私も蟲人判定を受けて門にはじかれたはずなのに蟲人が分からないとは……解せぬ


「とりあえず、いろいろあって疲れただろうから休むといいよ。と言っても、空いている家は無いから、今日は私の家に泊まるといいよ。こっちだよ、おいで」


私達はハクの後ろに続く。地球で言えば、太陽の方向からして一番北にある家がハクの家だった。この世界の太陽は一つしかないが、ほぼ地球と同じように東から西に向かって動くようだ。適当言ったけどまだ方角は分からないんだけどね


ハクの家はお世辞にも広いとは言えず、とうぜん布団代わりの草のベッドも一つだけだ。棚はあるけど食器だけで精いっぱいで、あとはカメに水をためているくらいだろうか。RPGの最初の村でももっと物が置いてあると思う


「何もない所でごめんね。蟲人になってからはむしろ自然な状態の方が楽なんだ。聞きたいことがあるなら答えるよ。椅子はあるから座って」

そう言ってハクが指したのは単なる切り株だった。これを椅子を呼ぶのか……

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