放課後の教室でクールな彼女は

闇野ゆかい

第1話私にとって彼女は

早月芽愛さつきめいには恋愛感情を抱く異性や同性は存在しない。現在いまにも過去むかしにも。

人間たにんと付き合いを持とうなんて、煩わしいだけだ。問題トラブルに巻き込まれるなんてまっぴらだと思っている。

そんな消極的な女性の私に、友情を育もうと思える存在が現れた。

しかも、同性の柳葉灯莉やなぎばあかりというクールな女子で、誰とも話そうとしない彼女が、隣の席になった私に話しかけてきた。

それは、ほんの些細なきっかけだった。

それを話そうとすると、長くなりそうなので、またの機会に。

その日以降、私は彼女と仲良くなっていく。

彼女と話していると、日頃の黒くて暗い部分を忘れられた。風に吹き飛ばされ、綺麗に体内から排出された気分を感じることができた。

彼女は、私の前だけ笑う。家族に笑顔を見せたのがいつかも忘れたと聞かされたときは、驚きこそすれど、すぐに府に落ちた。



高校生活が、1/3終え、二度目の夏休みを迎えようとしていた7月中旬の放課後。

屋上に早月芽愛と柳葉灯莉が転落防止のためのフェンスに背中をつけていた。

「風が吹いてないと、厳しいね。芽愛」

落ち着いた声が耳にすぅーと届く。

灯莉は、涼しくならないのに片手でぱたぱたとあおいでいる。

「そうだね。まだ校舎内でいた方がましだよ」

「周りの目があるから......芽愛、久しぶりにあれをしていい?」

「くすぐったいから嫌だよ。私が触られるだけでもなっちゃうのわかってるでしょ」

「軽くでいいから」

「うーん。キスならいいよ」

「いいの?ほんとに嫌な顔しないよね、口を聞いてくれないってことには──」

「ならないから、そんな顔しないで。灯莉」










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