魔物に襲撃される王都

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


「きゃあああああああああああああああああああああああ! 誰か! 誰かーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 突如現れた無数の魔物により、王都は大混乱に訪れていた。


 ガウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


魔物は複数のタイプにわかれている。辛うじて人間のような形を保っているグロテスクな魔物。グロテスクな犬のような魔物。などなどだ。どちらにせよ皆グロテスクな見た目をしている。


普通の人間なら見ただけで恐慌状態になるのは無理もないことである。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 女の人が悲鳴をあげた。犬のような魔獣に襲い掛かられたのである。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 剣聖を自己貸与(セルフレンド)した俺は、その魔獣を切り伏せ、一刀両断する。


 キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!


 魔獣は無様な悲鳴をあげて果てた。


「あ、ありがとうございます!」


「あっちに逃げてください。あっちのほうは比較的魔獣も少ないです」


「わ、わかりました!」


 女性は急いで逃げて行った。


「トール、どういうことなの? なんで急に魔獣が」


「わからない。とりあえずは王城のほうへ向かおう」


 王城のほうに力を感じた。かなり強い力だ。恐らくは王城に何者か、強い力を持った存在が現れたのは間違いない。


 そしてこの魔物たち。これらの存在は俺たちが旅立った王国グリザイアに出てきた魔物達と同じ存在だ。間違いなく、魔王軍の仕業であろう。そして強い力を放っている人物。間違いない、魔王軍四天王のうちの一人だ。


 そこまでは推測がついた。まずい。王城の守りは堅いが、それでも魔王軍の四天王相手では突破されるのも時間の問題だ。


 国王、それからフィオナ王女も心配だ。


「時間がない! 急ぐぞ!」


「うん! トール!」


「はい! トールさん!」


 俺たち三人は王城へと急いだ。

 

 ◇


「うっ……ううっ!」


 城の前には傷ついた兵士達がいた。


「大丈夫ですか! エミリア、ヒールをかけてやれ!」


「うんっ! わかったわっ! トール! オールヒール!」


 エミリアは全体回復魔法を使用する。癒しの聖なる光が兵士達を包み込み、あっと言う間に癒していった。


「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ、どういたしまして」


「それより、何があったのかを教えてはくれませんか?」


「ええ……突如、謎めいた少年が王城の前に現れたのです。私達は彼を止めようとしました。しかし私達は無残にも引き裂かれ、地に伏したのです。彼を止めることはできませんでした」


「おそらくはそいつが魔王軍の幹部――四天王だな。そいつはどこに行きました?」


「王城の中に。恐らくは国王と王女のところへ行ったのだと思われます」


 まずいな。王城の守りは堅いが、魔王軍の四天王が相手では時間稼ぎ程度の期待しかできない。


 時間はもうあまり残されていない。国王と王女の身に危機が迫っているとみて間違いなかった。


「ありがとうございます。急ぐぞ、エミリア、セフィリス!」


「うん!」「はい!」


 俺たちは王室を目指した。恐らくはそこに国王と王妃がいるはずだ。時間との勝負だった。手遅れになるよりも前に、俺たちはそこまでたどり着かなければならないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る