冒険者ギルドで英雄扱いされる

「……来たぜ」


「ああ。英雄トールの冒険者パーティーが」


 アレクサンドリアの冒険者ギルドに入った時、冒険者達がざわついていたのを感じた。


「トールさん……」


「どうしたんですか? 受付嬢さん」


 受付嬢さんが不安げな顔で俺達を出迎えていたのだ。


「本当ですか? トールさんは本当に邪神を倒したのですか?」


「そうよ! トールは邪神を倒したのよ!」


 エミリアが答える。


「ええ……まあ。エミリアのいう通りです」


「本当なんですね! すごいですっ! トールさん! あなたのおかげで我が王国、それにエルフの国まで、いえ、全世界が救われました!」


 受付嬢は俺に抱き着いてくる。腕に柔らかい感触が走った。


「ちょ、ちょっと! トール! にやにやしないでよっ!」


 エミリアが怒鳴る。


「に、にやにやなんてしてないって! お、大袈裟ですよ。受付嬢さん」


「大袈裟ではありませんわ! トールさん。あなたはそれだけの事をしたんです」


 受付嬢は感涙すらし始めていた。瞳に涙を浮かべる。


「ギルドマスターから、報奨金とランクアップの授与があります。後でギルドマスターのところへ行ってください」


 俺達はそう言われる。


「ええ。わかりました」


 俺達はギルドマスターのいる、マスタールームへ向かうのであった。


 ◇


「よくぞきたな……英雄トール君。まさか本当に邪神を倒すとは思ってもみなかったよ」


 ギルドマスターが俺達を出迎えた。


「全く、君は何者だ? まさか本当に世界を救う英雄だとでもいうんじゃないだろうな?」


「何者でもありませんよ。俺は俺です。それだけです。それに未来の事なんて誰にもわかりません」


 そう、俺がこれから何を成すのか。俺自身がわかっていなかった。俺は勇者なんかではないのだから。


「そうだな。それではこれよりクエストをクリアした褒章を行おう。まずは報奨金だ」


 俺はずっしりとした小包を貰う。


「やったわね! トール。お金がいっぱいね!」


「そうだな。セフィリスも仲間になったし、後で装備を新調でもしようか」


 前々からもらった金もあるし、相当に良い装備が新調できそうだ。


「うん! そうねっ!」


「ありがとうございます! トール様」


「何を言っているんだ。邪神は皆で倒したんだろ」


「次にランクアップの褒章だ。これで君達はАランクの冒険者パーティーだ」


 俺達はオリハルコンの冒険者プレートを貰う。これより上はアダマンタイトしかない。


「ありがとうございます!」


「……これで基本的にはあらゆる冒険者クエストを受注する事ができるが、上にはまだSランクが存在する。Sランクの冒険者パーティーを目指してますます精進して欲しい」


「「「はい!」」」


「それでは君達の益々の活躍を楽しみにしているよ。健闘を祈る」


 ギルドマスターは微笑んでいた。


 ◇


 俺達は冒険者ギルドを出た。


「これから装備を買いに行くのね?」


「ああ。そうしようか。金も入った事だし」


「やったーーーーーーーー!」


「念の為消耗品やアクセサリーも買っていくか」


 俺達はまず装備屋を目指した。装備は当然良いものにした方がいい。だが、俺達はまだその装備がすぐに役立つような機会が訪れるとは思ってもいなかったのである。


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