第31話

 土曜日の朝、俺は目の下に隈を作った状態で待ち合わせ場所に着いていた。涼しい空気がBPM120~150を刻み続けた心臓やオーバーヒートした脳を冷やしてくれる。


「あと、30分っと」


 ちなみに1時間前からいる。眠れなくって準備がものすごく早く終わってソワソワしてたからという理由などないこともないが、流石に早すぎただろうか。


「ココアでも飲んでおくか」


 俺は自販機でココアを購入。手袋越しでもわかる温かさ。早速飲んでいくことにする。


「……ふぅ」


 いっや、うっま! やっぱり冬はココアしか勝たんやろ! 


 うめぇうめぇとちびちび飲んでいたココアが冷めきる前に神崎さんが来た。


「ごめん! 待った?」

「いや、特段待ってた訳じゃないぞ」

「そっか。よかった」


 じっと神崎さんから視線が飛んでくる。期待の眼差しだ。えーっと……


「今日も可愛いな」

「ありがと!」


 正解だったようだ。神崎さんの顔にパッと笑顔が咲いた。こちらまで笑顔になるような明るい笑顔。なかなかに眩しすぎる。


「じゃ、いこ!」

「おう」


 神崎さんが俺を先導して歩いていく。俺はその後に従ってついていく。なんか俺、いつも後ろを歩いている気がする。まぁ、いっか。だって、


「あそこにはねぇ、小さめの公園があるんだ〜 それでね……」

「へぇ……俺もこの前走ってたら公園見つけたんだ」


 楽しそうだし。


 ★★★★★


 歩くこと20分。神崎さんが立ち止まった。大きめのマンションの前で。


「えっと……ここ?」

「うん!」

「何階?」

「12」


 下からいーち、にーい、と数えていく。


「うん。分からんくなったけど多分上から3番目とかじゃない? 知らんけど」

「うん。そうだよ?」


 いっや、たっかいねぇ! 物理的にも金銭的にもね!


 俺は色んな意味でドキドキしながらエントランスを抜けた。やっぱり中も綺麗だ。神崎さんがエレベーターを呼ぶ。


「川井くんはマンション初めて?」

「まぁ、誰かの家に行くとか無かったからなぁ」

「そうなんだ」


 そうこうしている間にエレベーターが来た。神崎さんが先に乗り込んで俺がそれに続く。


「……」

「……」


 まぁ、無言になるのは知ってた。神崎さんは特に気にした様子もなく扉にむいて立っている。12階には意外とあっさり着いた。めっちゃエレベーター早い。


「川井くん? どうしたの?」

「いや、なんでもない」

「じゃ、いこ?」

「おう」


 いよいよか。神崎さんの両親と対面するのは……


 俺は無駄にドキドキしながら残り10メートル程の廊下を歩いた。


        〜あとがき〜


 勉強会の前に前哨戦が控えていたようですね。次回が楽しみです!(書くのは自分なんですけどねw)

波乱の予感……は、しませんが、一波来そうですね! ではまた次回で!

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