第二章

第41話 《水刃放射》

 Cランクダンジョンがあるというアルムントに到着した。

 火山地帯にあり、町にはドワーフの姿がルンベルクよりも多く見られた。


「独特なにおいがするな」

「たぶんこれは硫黄のにおいですね。アルムントは温泉も有名みたいですから」

「温泉か。ちょっと気になるな」

「ダンジョンから帰ってきた後に入ってみてもいいかもしれませんね」


 温泉に入ったことのない俺はとても気になった。

 

 とりあえず、俺とソニアは宿屋を探してアルムント内を回った。

 陸竜を預けないといけないので、厩舎が併設されている宿屋を選んだ。

 普通の宿屋よりも値段は高いが仕方ない。


「ロアさん、宿屋の部屋ですけど今までに比べて宿泊料が高くなっているのでわざわざ部屋を二つ借りるのは勿体ないと思うんですよ」

「なるほど、一理あるな」

「アルムントに着くまでに野宿とかしてるわけで、寝てる距離とかも一部屋におさまるぐらいでしたし。私、ロアさんを信用してるので一部屋でも大丈夫です」

「そうか。じゃあ一部屋にしよう。こういう些細なところで節約はしていくべきだろうからな」


 話し合いの結果、宿屋は一部屋借りることになった。

 アルムントには昼前に到着したので、ダンジョンに行ってみるだけの時間があった。

 しかし難易度が前回よりも上がっていることから、情報は事前にある程度集めておくべきだろう。

 そういった理由から、まずは冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドはルンベルクよりも賑わっていない様子だった。

 お昼時はそれなりに人が多い時間帯なのだが。

 食事中の冒険者に酒をおごり、ついでに俺たちも食事を注文し、話を聞くことにした。


 話を聞いて、得られた情報は以下の通りである。


 ・アルムントでは炭鉱業が盛んなので冒険者よりも鉱石を掘った方が金になる。

 ・アルムントのダンジョンでは数は多くないが、罠が仕掛けられている。冒険者が仕掛けたものではなく、ダンジョンの不思議な仕組みらしい。Cランク以上の冒険者はよく「ダンジョンは生きている」というみたいだ。

 ・出現するモンスターはCランク以上だが、下層に行けば行くほど討伐推奨レベルは上がる。

 ・Cランクの討伐推奨レベルは300〜999の間である(Fは1〜29、Eは30〜99、Dは100〜299)

 ・ボスモンスターは『ヴォルケーノハウンド』という火を纏った巨狼でBランクらしい。


 なかなかに興味深い情報を聞けたと思う。

 そうか、アルムントでは冒険者の数が他よりも少ないのか。

 まぁでも全然いる方だとは思うが。

 ルンベルクよりも盛んではないってぐらいだな。

 今までよりも依頼を受けやすくなったかもしれない。

 そろそろ依頼を達成して、ギルドへの貢献度を上げないとランクを上げてもらえなくなりそうだ。


 掲示板を見て、丁度良さそうな依頼がないか探してみる。


「ロアさん、これなんかどうですか?」

「ん、どれどれ?」


 ソニアが持ってきた依頼は納品依頼だった。



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 納品依頼:[ヒートボアの皮] ×5


 報酬:3万ムル


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「ヒートボアって魔物がどれくらい出現するのか気になるが、たしかにこれは楽そうだ。楽というより面倒じゃない。魔物を倒すついでに達成できる内容だな」

「そうですね。ロアさんは多分レベル上げを優先したいと思ったので、こういった依頼がいいかなーと」

「流石ソニア。よく分かってるな」

「ふふっ、ありがとうございます」


 受付に持っていき、この依頼を引き受け、俺たちは『アルムントのダンジョン』へ向かった。


 ダンジョン内は少し暑い。

 移動しているだけで汗が出そうだ。


「ロアさん、前方にヒートボアを2体発見しました」

「ほう。一回層で出現するんだな。だったら一撃で倒せるだろう」



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『ヒートボア』

 ランク:C

 討伐推奨レベル:330


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 ソニアなら余裕で耐えられるだろう。

 俺も水属性の魔法を取得してあるので万全の状態だ。

 属性相性の重要性はルンベルクで学んだからな。

 それに『海賊ウィリアム・キッドの亡霊』との戦いで俺たちはステータスの面でも技術面でもレベルアップしている。



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 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[キャプテン]

 レベル:320

 HP:2320/2320 MP:3220/3220

 攻撃力:990

 防御力:570

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》《紫電一閃》《身体強化》《水刃放射》


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 俺は150レベルを消費して《水刃放射》という水魔法を取得した。



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 《水刃放射》

 消費MP:350

 基本ダメージ:10000

 属性:水

 詠唱時間:2秒

 クールタイム:20秒


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 《紫電一閃》でケルピーを一撃で倒せたのだから《水刃放射》も火属性を相手にするなら問題ないだろう。

 ちなみにソニアのステータスはというと。


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 ソニア・クラーク 17歳 女

 レベル:540

 称号:[キャプテン]

 HP:6100/6100、MP:2500/2500

 攻撃力:210

 防御力:5400

 ユニークスキル:【難攻不落】

 スキル:《鉄壁 レベル10》《自己標的 レベル10》《状態異常耐性 レベル10》《絶対防御 レベル1》《守護の心得 レベル1》《毒盾 レベル1》


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 こんな感じである。

 レベル差が100以上あるので現在パーティを組んでいない。


 移動時間にスキルポイントの振り当て方を俺と話し合った。

 派生するスキルはスキルを取得した際に次に取得出来るスキルが分かるようになる。

 取得するには前提となるスキルレベルを最大の10にしなければならない。


 俺はソニアに自衛する能力を身につけてほしいと思っていたので、《状態異常耐性》の派生である《毒盾》を身につけてほしいと頼んだ。

 称号キャプテンの効果で攻撃力は210と上がったけど、この先それでは間違いなく不足する。

 だから時間経過によってダメージを与えられる毒を付与するスキルがソニアの武器となる。

 ちなみに《毒盾》のほかに《麻痺盾》、《睡眠盾》というスキルも存在した。

 スキルポイントが溜まり次第取得していきたいところだな。

 他のスキルも強力なものが多いので、頑張ってレベルを上げていきたいものだ。


 さて、話をもとに戻そう。


「《水刃放射》」


 俺はヒートボアに《水刃放射》を詠唱し、放った。

 鋭い水が勢いよくヒートボアに直撃する。

 ……ん?

 これ少し動かせるのか?


「ソニア! 左に走れ!」

「はい!」


 俺は《水刃放射》を動かして、もう1体のヒートボアにも直撃させた。

 それが刃のようになって、2体のヒートボアを斬り裂いた。


 2体のヒートボアは真っ二つになった。

 討伐完了だ。


 ……あ、そっか。

 ヒートボアの討伐推奨レベルが俺とあまり変わらないから経験値のボーナスもなければレベルも上がることはないのか。

 倒してもレベルが上がらないことなんて普通だけど、おかしいなと思ったあたり感覚が麻痺していたな。


 しかし下層に行けば、討伐推奨レベルの高い魔物が出現するはずだ。

 それなら経験値のボーナスも獲得できるはずだ。

 ヒートボアを5体倒したあとはとっとと先に進むべきかもな。

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