第30話 《紫電一閃》と[ミスリルの剣]
上機嫌になったエリックから色々なことを聞けた。
冒険者歴は2年で俺より1年長い。
ユニークスキルを持っておらず、スキルポイントの使い方も上手くなければ、戦闘のセンスも無いらしくて、ずっとDランクで停滞しているみたいだ。
そんな冒険者は珍しくなく、多くの人達はエリックのように辞めていく決断をするらしい。
他に俺が冒険者に聞きたいと思っていたことは二点だ。
・ルンベルクの魔法使いの実力
・冒険者の間での魔法使いの価値
主に魔法使いという存在がどのように見られているか、を知るための質問事項である。
「ルンベルクにあるダンジョンはDランクのものだから魔法使いもD〜Cランク相当の人が集まっているね。属性攻撃できることが魔法使いの強みだから、ルンベルクにはロアのように雷魔法を覚えている奴らが多い気がするよ。魔法使いは他の役職に比べて、ユニークスキル持ちばかりだから何かと重宝される場面が多いかもしれないね」
なるほど、強力な魔法を覚えるにはユニークスキルが必要不可欠だ。
わざわざユニークスキルを持ってもいないのに魔法使いを目指す物好きは中々いないってことだろう。
だったら魔法使いの存在は冒険者にとってそれなりに価値のあるものみたいだな。
ならば冒険者ギルド側もそこは評価するはずだ。
ギルドカードには所持者の役職が書かれている。
最近気づいたのだが、青銅(ブロンズ)になったギルドカードには新しく『魔法使い』と記入されていた。
以前は『新人』と記入されていたのを覚えている。
1年経っても新人というのもどうかと思っていたので、この記憶は間違いないだろう。
今目指すべきことが段々と見えてきた──そう思っていたが、俺はいつの間にか酒を飲みすぎて酔い潰れた。
◇
気付けば宿屋の一室にいた。
ベッドで横になっている。
そして隣でソニアが規則正しい寝息をたてながら眠っていた。
とりあえず俺は布団をめくった。
よかった、ちゃんとソニアが服を着ている。
状況を察するに俺を宿屋まで連れてきたソニアが一緒に眠っていただけだろう。
ただそれだけ。
何も起きていない。
窓からは陽の光が差し込んでいる。
朝か。
どうせならソニアを起こして活動を始めよう。
「おーい、ソニア。起きろー」
「……ん、ロアさん…………えへへ…………すー……すー」
ソニアは一度目を覚まして、微笑んでからまた寝てしまった。
いつもはちゃんと早起きしているのに珍しいもんだ。
疲れが溜まっているのかもな。
寝かせておくか。
俺はベッドから起き上がり、部屋にある椅子に座る。
さて、昨日エリックから聞いた情報を整理して、これからの計画を立てよう。
まずは『ルンベルクのダンジョン』のボスを倒して称号を貰う。
各地のダンジョンを踏破して称号を貰うのは変わりなしだ。
だが、各地のダンジョンに向かうには徒歩じゃ不便だ。
そこで馬車を購入する必要があると俺は考える。
いや、ここで移動時間の短縮を考えるなら馬よりも陸竜などの方がいいかもしれない。
値段はかかるが、【アイテム作成】を使えば金は効率よく稼ぐことが出来る。
今の候補は[マジックバッグ]を作成して売り払うことだな。
先日出会った鑑定士イヴァンの店に行けば、相場通りの価格で買い取ってもらえるはずだ。
次に優先すべきことは冒険者のランク上げだ。
冒険者のランクを上げなければ高ランクのダンジョンに入ることが出来ないらしいからな。
そして、どうやらエリックの話では依頼もちゃんとこなさないとランクは上がらないらしい。
掲示板は毎日確認しなければいけないな。
そりゃあんだけ人集りも出来るわ。
んで、俺が狙う依頼はもちろん、モンスターハウスの駆除だ。
それ以外にも討伐依頼は積極的に引き受けてもいいかもしれない。
なによりもレベルを上げることが俺にとって重要だと考えるので、納品依頼とかはちょっと微妙だ。
「あーでも、【アイテム作成】を使えばいけるか」
【アイテム作成】は素材も作成することが出来るので、納品依頼が必要になるような素材はレベルと引き換えに入手することが出来る。
依頼をこなすのがめんどくさくなったら、最悪これでいいかもな。
で、次は取得すべき魔法だな。
Dランクのダンジョンボスは今までの傾向を考えるに、Cランクの魔物である可能性が非常に高いと思われる。
だからCランクを一撃で倒せるような魔法を覚えたい。
《稲妻雷轟》は範囲攻撃魔法でダメージは150レベル消費して取得できる他属性の魔法よりも低めに設定されている。
次のランクの攻撃魔法は大体500レベルを消費して取得するものばかりだったので、Dランクのダンジョンだと少し稼ぎにくそうだ。
なので150レベル消費して取得できる他の雷属性魔法が無いかと探してみた。
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《紫電一閃》
消費MP:300
基本ダメージ:12000
属性:雷
詠唱時間:2秒
クールタイム:20秒
必要ステータス:攻撃力500
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たぶん必要ステータスの攻撃力500は、攻撃力が500ないと使えないってことだよな?
……全然足りねえ。
でも【アイテム作成】で武器を作ればなんとかなるかもしれない。
消費レベル150で作れる武器がないか探してみる。
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[ミスリルの剣]
消費レベル:150
効果:攻撃力+400
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[ミスリルの剣]って響きがもうカッコいいな。
《紫電一閃》もいかにもカッコ良さそうな魔法だ。
これもう魔法というよりスキルなんじゃないか?
魔法とスキルってどういう基準で分かれているんだろう。
ソニアにでも聞けば分かるかな?
起きたら聞いてみるか。
とりあえず俺はカッコいいから、という理由で、この二つのためにレベル上げを頑張ろうと思いました。
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