第6話 Eランクに昇格
『フォイルのダンジョン』やってきた俺は昨日のように[MP回復薬]作りに励んでいた。
昨日の反省を活かして、今日は自分の中でルールを作っている。
俺は用意周到なのだ。
ダンジョン内のルールその1。
『走ってはいけない』
そう、ダンジョン内で走ると足音で魔物に存在がバレてしまう。
なので足音を極力抑えて、ゆっくりと移動しなければいけない。
ダンジョン内のルールその2。
『耳を澄ませる』
耳を澄ませば、近くに魔物がいるときに気付くことが出来る。
そして今、俺の前方付近で咀嚼音が聞こえる。
曲がり角を曲がったところだろう。
どうやら魔物が食事をしているようだ。
この咀嚼音の大きさは、獣系の魔物かな?
ハンターウルフとかな気がする。
さて、こういう場面になったときも自分のルール通り行動するのが大切である。
ダンジョン内のルールその3。
『魔物を見つけたら、物陰に隠れてジッと待つ』
超大事だ。
これをしなければ俺は魔法を詠唱することが出来ない。
ちなみに今までの自分ルールはレベル1でかつ、パーティを誰とも組むことが出来ていない状況でのみ適用されるだろう。
前衛を務めてくれる人がいれば、こんなルール守る必要はない。
ただ、パーティの人数が増えれば、その分経験値は分散されるため、多ければ良いというものでもない。
一人で戦えるうちは一人が望ましいだろうな。
さて、物陰に隠れても魔物はこちらに来る気配はない。
安全かつ効率よく魔物を倒すことが大切なので、これは大きなロスタイムになる。
待っても魔物が来ない場合はどうするのか?
そういうときは、石ころを投げる。
コロッ、コロッ。
石ころを投げた音に気付かないほど魔物も間抜けではない。
そして実際に今も咀嚼音は止まった。
魔物は警戒しながらこちらに近づいてきている。
そして、俺の前に姿を見せたそのとき、
「《火槍》」
詠唱をし、標的の魔物に《火槍》を命中させる。
「キャウンッ!」
ふむ、どうやら食事をしていた魔物は予想通りハンターウルフだったようだ。
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『ハンターウルフ』
討伐推奨レベル:40
ランク:E
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『自身よりも強い敵を倒ししたため、経験値が加算されました』
『レベルが10上がりました』
メッセージが流れた後、俺は機械的に【アイテム作成】を発動し、[MP回復薬]を作成する。
『【アイテム作成】の効果により[MP回復薬]を1つ作成しました』
そして仕留めた魔物から魔石だけを頂戴して、次の獲物を探す。
これの繰り返しである。
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【本日の戦果】
[MP回復薬] ×17
[魔石(Eランク)] ×17
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バックパックが[MP回復薬]と[魔石(Eランク)]で一杯になった。
あと一日、[MP回復薬]の作成を頑張ればバックパックは一杯になることだろう。
しかし、戦果を振り返ってみると、今までの比べ物にならないな。
お金に換算してみると、
[MP回復薬]が17個で170000ムル。
[魔石(Eランク)]が17個で34000ムル。
合計で204000ムルか……。
【魔法創造】を手に入れる前の戦果の40日分だな。
……うーん、素直に信じられないな。
これが夢なんじゃないかと思えてしまう。
自分の顔を右手の中指で弾いてみた。
「いたっ!」
ちゃんと痛い。
たぶん夢じゃない。
◇
ダンジョンから帰ってきた俺は冒険者ギルドにやってきた。
換金をするため、受付に向かう。
魔石(Eランク)を17個バッグパックから取り出すと、ギルドの職員は少し驚きながらも普通に換金してくれた。
「ロア、ギルドカードよこしな」
換金した後にギルドの職員がそう言った。
「なんでだ? 何も悪いことしてないぞ」
「そうじゃない。お前はEランクに昇格だ。ギルドカードの更新があるからとっととよこせ」
「昇格? ずっとFランクだったのに?」
「……そうか。ランク昇格に縁が無さすぎて仕組みを忘れているんだな。簡単に説明してやる。冒険者ランクってのは、ギルドへの貢献度と本人の実力で評価されるんだ。ロアは今まで貢献度はEランクの昇格に満たしていたが、実力は全然だったからな。それで昇格出来なかったんだが、今回の騒動でEランク相当の実力は備わっていると評価され、無事昇格したってわけだ」
「なるほど、じゃあ、はい」
ギルド職員にギルドカードを渡した。
「明日新しいギルドカードを渡すから、ちゃんと冒険者ギルドに来いよ」
「分かった」
俺は自慢じゃないが、この1年間、冒険者ギルドに来なかった日は無い。
明日も問題なく冒険者ギルドに顔を出すことだろう。
しかし、Eランクに昇格か。
1年もかかった奴は俺ぐらいだろうな……。
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