第19話 軍靴

タクシーへ走る背に見よ棄てられた傘の柄はまだあたたかいまま


こっちからそっちの軒まで五メートル濡れて走れば「なんでよ」「なんでも」


こんなにも雨のバス停夏服は透けているのだ紳士は走れ


傘もないホテルも遠いわたしたち溶けて泥に戻ればよかった


放課後の軍靴のごとき雨足にアオザイ姿はカブまで駆けて


高祖母の語りながらも細めらるまなこの向こう旅順の空は

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