第31話 周知の恋心

唯香のお母さんの料理は

懐かしくて

旨い


「そんなに食べて大丈夫?」唯香


唯香は俺の食いっぷりに驚く

俺はモグモグ口いっぱいにほおばりながら

ウンウンと頷く


唯香のお母さんは

それを嬉しそうに見て


「愁くん変わってないね

嬉しくなっちゃう」唯香のママ


そう言って

俺のおかわりの茶碗を受け取った


「愁くんみたいな息子が欲しいな」唯香ママ


唯香のお母さんがそう言うと

一瞬

俺と唯香は目を合わせ

直ぐに逸らして

固まる


微妙な空気


唯香のお母さんは俺たちを見て


「えっ?私、なんか変なこと言った?」唯香ママ


唯香は急に立ち上がって


「いや、別に・・・

私、ノート買い忘れたから

コンビニ行ってくる」唯香


そそくさと財布とスマホだけをもって

部屋を出て行った


唯香のお母さんは俺と唯香をキョロキョロ見ながら

不思議そうな顔をしている


置いていくなよ!!この空気の中に・・・


”バタン”


と唯香が玄関のドアを閉める音が響いた


唯香のお母さんは俺の方を見て


「私、悪い事言ったのかな?」唯香ママ


心配気な顔で見る

俺は・・・


「いや・・・大丈夫だと思います」愁


そう言ってニコリと笑顔を作るけど

唯香のお母さんは俺をジーっと見て


「唯香、愁くんの事が好きでしょ?

もしかして昨日

久しぶりに愁くんに会えて告白とかしたのかな?

っで

振られちゃったとか?

だから

私があんなこと言ったからバツが悪くて

出て居ちゃったのかな?」唯香ママ


俺はあからさまに困った表情で


「いや、違います

そうじゃなくて・・・逆です」愁


唯香のお母さんの視線に

ウソが付けなくて

俺は観念する


「逆?」唯香ママ


俺はぶつぶつ独り言みたいに


「俺が昨日・・・告って

唯香に振られちゃって・・・

今日、もう一回、話がしたくて

会えないって言われてたのに

勝手に来たんです」愁


俺、唯香のお母さんに何言ってるんだろう・・・

唯香のお母さんはまた驚いた顔で


「愁くんが?本当に?

え~嬉しい」唯香ママ


唯香のママが嬉しいって言ったって・・・


「あの子、何で断ったんだろう?

ずっと

愁くんが好きなのに・・・」唯香ママ


唯香のお母さんは考える


「簡単に言うなって怒られました

って言うか

唯香って

お母さんにそんな話するんですか?」愁


唯香のお母さんは

キョトンとした顔で


「言わないわよ

あの子がそんな事言うわけないじゃない

でも

分かるでしょ

誰だって

あの子を見てたら」唯香ママ


そうなんだ

そんなに皆が分かるくらい

唯香って俺の事が好きだったんだ・・・


知らなかったのは俺だけ

知らなかったんじゃない

気が付かなかったのは俺だけだ


俺は立ち上がり


「コンビニ

ちょっと遠いし

もう暗いから

俺、唯香の所に行ってきます」愁


俺は唯香のお母さんを一人

部屋に残して

唯香の後を追った


唯香のお母さんは


「愁くん!!」唯香ママ


俺を呼び止めた


「あの子

頭が固いから

色々考えすぎてると思う

少し強引に・・・ね

愁くんの事

ずっと好きだから

今だって・・・きっとそうだと思うから

宜しくね」唯香ママ


俺は


「ハイ」愁


大きめの声で返事をする

唯香のお母さんはにこりと笑って見送ってくれた

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