第27話 動き出す

結婚式の招待状が届いていると

ママから連絡が来た

久しぶりに実家へ帰る


「同級生の子?」ママ


そう尋ねながら

綺麗な封筒を私に手渡した


「そうなの

二人とも大学の時の友達」悠


純一郎と美咲

結婚するんだ・・・


あの時は

私とうまく行かなかったから

手近な美咲を選んだだけでしょ!!

なんて

私はふて腐れて少し上から目線で

自分の代役のように彼女の事を見ていた


そうでも思わなければ自尊心が保てなかった


だけど

こんなに長く続いて

ちゃんとこうして結ばれるなんて

二人は本物なんだね


今はちゃんとそう思う


おめでとう


私はその場で招待状の封を開けて

返信に書き込む


欠席に丸を付けた


その姿を見て


「行かないの?」ママ


不思議そうに聞く

私は頷いて


「お祝いだけする

行きたいんだけどね

久々にみんなに会いたいんだけどね」悠


何故か涙

ママはそれを見ないふりをするように

背を向ける


どうしてここで泣くのだろうか?

純一郎に別に未練はない

遠い昔の苦い思い出


悲しいのは

今の自分の状況

結婚目前で大切な人を傷つけて別れて

そのきっかけになった人は

そんなことも知らないで今頃は遠く遠くにいる


あれから一年半がたとうとしている


何してるんだろう?

会いたい

会いたい

どうしてこんな時に直ぐに会える場所にいてくれないの?


思えば思うほど悲しくなった


私は数日後

無理矢理、有休を使って旅立つことにした


動き出す


彼のもとへ

アメリカへ


涼太に届いていたエアメールだけが頼りだった

栞の所在なんて誰にも聞けない

連絡先も…

涼太はいい加減だから

きっと勝手に持ち出したって気づくことは無いだろう


仕事で一度、台湾へ行った

その時のパスポートは有効期限内


良かった

これは“行け“ということだと確信する


旅行会社で最短の日程でチケットをとった

私は最小限の荷物をもって部屋を出た


空港から飛行機

長いフライト中

眠れないほど考える


早く会いたい


アメリカについても

直ぐには会えない

飛行機からまた国内線そしてバスに乗る


英語の成績は良かった

だけどやっぱり

話しかけるのは怖い

でも今は頑張るしかない


彼の大学のある町


親切な人に助けられて

彼の住むマンションまでなんとか着いた


胸が高鳴る

どうしよう

今更、とてつもなく緊張してきた


螺旋階段を上る

息が切れる

三回の角部屋


ドアの前


彼は

栞は

今、家にいるのだろうか?


何の確証も無い

ここに今

彼がいて

私が来たことを喜んでくれるなんて・・・


もしかしたら

もう彼女がいるかもしれない


私は早川と結婚することを受けて

幸せに暮らしていると思っているだろうし


迷惑かも・・・


どうしよう

あまり寝ていないから肌が痛んでいる

お化粧だって崩れてしまって

髪の毛もときっぱなし


そうこうして

ドアの前で悩んでいると


”カチャッ”


ドアが開いた


そこからとてもセクシーなスパニッシュ系の美女が出てくる

私を見て”びっくっ”と驚くそぶりをして

険しい顔で何やら私に怒鳴りだす


見知らぬ外人が部屋の前で立っていることを不愉快だと言っているようだ


怖い

だけどそれ以上に私を固まらせたのは


栞の住む部屋からこの美女が出てきたからで・・・


最悪のシチュエーションを想像させる


そうしていると

その騒ぎを聞きつけて

部屋の奥から出てきた・・・栞


!!!


栞は私の顔を見て驚く

それはそのはず

いるはずのない人間がここにいるんだから


直ぐに私に駆け寄って

彼女の前に立ち私の事を説明する


すると興奮していた彼女は嘘みたいに落ち着き

満面の笑顔を見せて私をはぐした


どういう事?


二人の会話が早すぎて聞き取れなかった

栞は彼女にどういった説明をしたのだろうか?


栞は嬉しそうに私を見て


「悠ちゃん、久しぶり」栞


ずっとずっと以前(まえ)に見た時のような栞の可愛い笑顔に

私は嬉しくてうれしくて 

緊張と緩和の激しさもあって

気を失った

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