第7話 Christmas(下)

12月25日

待ち望みすぎて

一週間が長くて

毎日毎日、着ていくものや髪形を選びなおしたりしていた


いよいよ当日

なかなか起き上がれないで、昼頃起きた

私は直ぐに自分の異変に気が付いた


頭はズキズキ

体の節々が痛い

目は潤んでよく見えない


体温計で熱を測る


38.9


高熱だ


ママに言うと


「インフルエンザ流行ってるからね」ママ


サラッとそう言って病院へ連れて行ってくれた

こんな時期だから待合室は満員

インフルエンザの疑いのある私は別室に通されたものの

そこも人が多くて

ママは何も症状がないのに

ここに居るのは不安だろうに

ずっと横にいてくれた


3時間くらい待った


私は座っているのも辛くてママにもたれかかり

目を閉じていたから

時間の感覚はあまりなかったけど…


やはりママの診立てはあっていて流行りのインフルエンザ

私達が薬をもらって家に帰ったのは約束の時間の1時間前だった


もうフラフラだった


どんなに頑張っても

インフルエンザの状態で会には行けない


私は純一郎にメールをした


”ごめんなさい

今日は行けない

インフルエンザになった”


これが精一杯の文面だった

私はこの後

意識を失ったように眠った


目が覚めたのは20時過ぎ

薬の効果か?体が随分と楽になっていた


”トントントン”


「悠、食事置いておくからね

部屋からなるだけ出ないでね」ママ


ママが部屋の前にお粥と温かいお茶を置いていった

分かってるよ

そんなことくらい

感染症だし

人には会ってはいけないことくらい…


少しドアを開けて

食事の乗ったトレーを受けとる


お腹はすいていない


机の上に置く


ふとスマホを見ると着信5回とメール10回

慌てて開くと

すべて純一郎からだった


全く気が付かなかった


メールの内容を確認する


”インフルエンザなの?本当に?

じゃ、今日は会えないの?”


”今どこにいるの?家?”


”電話だけでも話せない?”


”どうして返信くれないの?

病気でも電話くらいはできるよね?”


”今、どこにいるの?心配なんだけど!”


”本当にインフル?

もしかして今日が嫌になったとか?”


”とにかく電話に出て!!”


”もしかして無視されてる?”


”普通こういう時

メールで断ったりしないよね

本当にインフルなの?

疑ってるよ

特別な日の約束だって思ってたのは俺だけなの?

俺、馬鹿にされてるのかな?

マジでムカついているんだけど!

電話に出てくれないならもういいよ!!”


”最低だな”


10件のメールは彼の感情が溢れていた


私は嘘なんてついていない

馬鹿になんてしていない

私だって今日が楽しみで楽しみで

待ち遠しかったのに

病気になってしまっただけなのに

眠ってしまっただけなのに


とうとう純一郎を怒らせてしまった

何年も積み重ねてくれた純一郎からの思いは

ボロボロとくずれ落ちるように終わっていった


私はそれを追うわけでもなく

スマホの電源をオフにして布団にもぐった


今は涙もでない

何も考えられないから


ただ、この数年

私を思ってくれていた彼の愛情を

もっと早く受け止める勇気かあれば

こんな誤解で

こんなすれ違いで

こんなことくらいで

悩ませて

怒らせて


キャラにもなく酷いメールを送らせないですんだのかもしれない


あんなに穏やかで優しい彼に…


これは全て

私のまいた種だ


私がジラしてジラして

フラフラして

彼を不安にさせたんだ


しっかりそれに向き合えるくらい元気になったら

とりあえず泣いて

その後、謝りにいこう


手遅れかもしれないけど…


今はとにかく

病気を治す事だけ考える


眠りたい

ただ、眠りたいと思った


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る