魔王は幸せを得たい

おうどん

第1話 1度目の終わり

魔王ダストールは幸せというものを味わった事がなかった。

ダストールは元は普通の人間であったが、まるで魔族のような恐ろしい力を持ち、街の人達に怯えられ、遂には両親にも捨てられた。


だが、ダストールは人々を恨んでなどいなかった、むしろこんな力を持って生まれてきた、自らを一番憎んでいた、「この力さえなければ、、」とだがそんなダストールを受け入れくれる者達もいた。


それは魔族だ、魔族は強い力を持った者に付き従うと聞く、ダストールは強大な力を使いすぐに魔族達の王になった。

魔族達は思ったより良い奴らばかりで俺は過去の事など忘れる程だった。


その中でも一番の部下、女悪魔ベルフェは俺にとって、特別であった。

「魔王様!!また野菜をお残しになったんですね!!ちゃんと食べてください!!」

「悪い、だが野菜だけは苦手なんだよ、、勘弁してくれ、、」

このようにとても厳しいが、共に優しさを持つ、そんなベルフェそして、仲間達との楽しい日々が延々に続けばいいな、とそう思っていた。

しかし、その楽しい日々が突然終わりを告げる。


人間の軍隊が攻めできたのだ、魔王を討つために勇者を連れて、

「我々はいずれ人間に危害を加えるであろう魔族どもを野放しにしてはおけん!今ここで皆殺しにしてくれる!!」

勇者の力は圧倒的だった、何万もの魔族達を殺し、幹部の魔族をも圧倒していた、そして今、俺の1番の部下ベルフェにまで手を出そうとしている。

俺の体は動揺をかき消し、動いていた、大事な者を守る為に、俺はボロボロの体から力を振り絞り、最後の魔法を使い、ベルフェを守った、俺はもうどうする事も出来ないダメージを負ったが、勇者にも同じダメージを与えてやった、もうどちらも再起不能だろう、ダストールと勇者は共に地面に倒れ込む。

ドタバタと聞こえる大量の足音、勇者がやられた事により、人間達が撤退していくのだろう。良かった、犠牲は大きかったが一番大切な者を守れた。

そして今にも落ちていきそうな意識の中、目の前の者から声が聞こえる。


「魔王様!!魔王様!!なぜ!私なんかを、庇ったのですか!!あなたは、あなた様は魔族達を束ねる事が出来る凄いお方です!こんないきなり、こんな私の代わりに死んでいい方ではありません!

「いいんだ、ベルフェ、むしろすまない、俺が魔王などになったから、人間達が魔族を危険視したに違いない、、それに愛するものを守れたのだからそれでいい、、これからはお前が魔族を束ねていってくれ、大丈夫だ、心配するなお前は凄い魔族だ、俺なんかに遅れをとったりはしない、そして今までたのしかった。」

「来世では幸せな人生を送りたいな、、」

その言葉を最後に俺の意識は薄れ落ちていった。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る