第2話

 その時はまだ優花を春川さんと呼んでおり、友達の友達、くらいの認識だった時だった。いや、ちょっといいなって思ってた。


 その日はなんでもないはずの日だった。図書室でぼーっとしてそろそろ帰ろうかと思って下駄箱に行った時、


「神様、どうか届きますように……」


 俺の下駄箱にお祈りをしている変態がいた。俺の下駄箱が開いているからお祈りの先は俺の下駄箱で間違いないだろう。


 そしてその変態はお祈りを終えると手紙を入れ、周りを確認した。そして、目が合った。


「何してるんだ?」

「……へ?……ぃぃぃぃやああああ!!」

「まて!」

「嫌っ! 離して! 見られたからには死ぬしかない!!」


 首根っこを掴んで捕まえたが、じたばたとしていた。


 死ぬとは物騒な……


 そのまま、下駄箱を開けて手紙を取り出した。


「ちょっ! 待って! 私の前で読まないで! 離して!」

「あ、暴れるな! あ"!」


 逃げられた。とりあえず読んでみる。


『神社まで来てください』


「みじか!」


 とりあえず行くとする。ここら辺で一番近い神社だろうか? とりあえずそこでいいだろう。


 外に出ると夕日が空を真っ赤に染め上げていた。真っ先に思い浮かんだのが、赤潮だった。今日やったからだろう。まだ季節は秋に入ったばかり。涼しくは決してない。


 着く頃には東の空から綺麗な満月が夜の闇を連れて来ていた。そして、当の本人はいなかった。


「は? なんでおらんのん?」

「い、いるよ! 思ったより暗くなって怖かったから、縮こまってたとかじゃないよ!」


 いや、いた。社の階段のすぐそばに丸まっていた。怖いのなら昼の学校でも良かったのに……そこら辺は本人が決めたことだから気にしたらだめだ。


「んで? なんで呼んだんだ?」

「えっとね……その……」


 あえて聞き、ゆっくりと返答を待つ。待つのはいいのだが、


「………………………………………………」


 今にも泣きそうな雰囲気(見えないからな雰囲気しか分からない)で黙られてると罪悪感がすごい。だからこちらから動こう。


 と、決めて、俺は優花に近付いて行き、


「きゃ!」


 押し倒した。正しく言うと、石畳の道から横の芝生に引っ張って押し倒した。


「え、え、え?! そ、そういうのはちょっ……!?」

「少しは落ち着け」


 俺は優花の上からどき、隣に転がった。


「え?……どういう状況で?」

「空を見てみろ。綺麗だろ? 時々来るんだ」

「ん? わぁぁ……」


 しばらく黙って星空を眺めていた。どれだけ時間がたったか分からくなってきた時、優花が喋り始めた。

 

「ねぇ、知ってる? 実はね、私、君に一目惚れしたんだよ?」


 そうなんだ……全く知りませんでした。


「それでね、会話とか重ねる度にどんどん好きになっていった。でも、今の関係を壊したくないから思いを伝えられなかったんだ」


 そして、一拍置いてこちらに寝返りをうつ。


「でも、我慢するのはもう無理。私はあなたを私のモノにしたい。独り占めにしたい。誰にも渡したくない。私と付き合ってください」

「ごめん」

「え……」


 俺は即答した。


「なんで?」

「俺は、心臓が弱くていつ病気が発症するか分からないし、高校を卒業することすら難しいかもしれない。春川さんのことは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。でも、俺は俺のために好きな人が悲しむのが嫌だ。だから、ごめん」


 ここまで言えば引いてくれる。そう思っていた。なのに、


「ごめん、他に好きな人がいるならまだしも、その理由なら引くことは出来ないな。最後の一瞬まで好きな人といたいって思いは間違っているかな?」


 予想外の反論をもらった。ここまで言って引かないのなら無理だろう。


「いや、間違ってないと思う」

「そう? なら、これからよろしくね」

「こちらこそ、よろしく」


 それからしばらくお互い黙って星空を眺めた。星も祝福しているように輝いていた。俺はかなり幸せなんだなって思った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ここまで読んでいただきありがとうございます!少しでもいいなって思ったら★、♥、フォロー、お願いします!

 あと4話で完結します。どうかよろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る