ドライフラワー を聴いて⑤

UTAYAで本を読んでいた奏はその頃。


大好きな少年漫画のコミックスを読んでいたが、なぜか今は内容が全然頭に入ってこなかった。


奏はコミックスを元の棚へと返した後、

気分転換になるかと思い行ってみたい海外の国の旅行本を探す。

そして、目的の本棚への通り道で、奏は子育てブースの近くを通りかかった。


みてみて、パパ、七輪刀、凄いでしょ♪



兄ちゃんだけずるいー、僕もー!!


だめよー!本屋さんで騒いじゃ。


まあまあ、育児スペースなんだし、

このぐらいはしゃぐくらいはいいじゃないか。


はぁ〜、全くあなたって人は。

自分にも子供達にも甘いんだから。




幸せそうな家族の姿を遠くからただ静かに見つめる奏。


本来ならすぐ近づいて、"キミ、凄いじゃ〜ん!"と

フレンドリーな会話をしていたかもしれない。


しかし、そのときの奏には、

自分がこの場にいることが場違いな気がした。


なんとも言いようがないような漠然とした居心地の悪さ。

それしか感じることが出来なかった。

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